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《2003.1月−8》

あまりに人間的な◇宮本武蔵像
【武蔵と四郎 (無限)】

脚本:盛多直隆 演出:伊集院晃生
18日(土) 14:00〜16:00 大博多ホール 2000円


*** 推 敲 中 ***

 荒唐無稽だが、それを生真面目にやるアンバランスさが笑いを誘う、という舞台だ。
 甘ったるさは前回公演と同じように目立つし、歴史上の超有名人のイメージ借りと手前勝手な解釈にはかなりうんざりするが、それがこの劇団の持ち味だと納得せざるを得ないのか。劇団がめざしているのは、中間演劇よりもさらに商業演劇寄りかなという気がした。

 あまりに人間的というか、精神性のなさ過ぎる武蔵だ。
 隠居中の宮本武蔵が軍事顧問として島原の乱に引っ張り出される。幕府方に所属しているにもかかわらず、乱の首謀者・天草四郎と友情を結ぶ。
 その武蔵、30歳の遊女から惚れられてまんざらでもなさそうだし、あだ討ちに来た佐々木小次郎の息子・新次郎を茶化すし、チャンバラでは普通のサムライ相手にどっこいの勝負だし・・といった具合で、普通のサムライの名前をたまたま武蔵にしたというだけのことだ。
 だから史実と違うなどと言ってみたところで何にもならないのはわかる。だが、そういうところに付随する不自然さが全体を大味にしている。戦のやり方が変わったから武蔵のやり方は古いなどという納得できるセリフもあるが、全体的には常識的な一般論が多く新鮮味に乏しい。

 もちろん悪いところばかりではない。
 衣裳などの工夫でちゃんと時代劇になっていること、そして個性的な役者がちゃんと演じていることはいい。鎌田耕治、栗栖功明 がいかにもサムライという演技だ。はせがわ天睛 も軽い三枚目をうまく演じる。

 ここまできたら荒唐無稽を徹底してもらえばいい。
 荒唐無稽のスケールを大きくし込み入らせ、人物像をさらに極端にしてもっとしつこくリアリティを持たせるなど、娯楽性をさらに追及する。ぶっ飛んだ状況設定と派手なストーリーで観客を夢中にさせるようなフィクションをめざしてもらえばいい。

 この舞台はきょうとあすで4ステージ。きょうのマチネーは8割くらいの入りだった。


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