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《2003.1月−9》

アイディアたっぷりで☆楽しめる
【人間ぎらい (九州大谷短期大学 23期生卒業公演)】

作:モリエール 演出:梁木靖弘
19日(日) 14:00〜16:10 九州大谷短期大学 小劇場 無料


*** 推 敲 中 ***

 テンポがよく、デテールにアイディアを詰め込んだ舞台で楽しめた。
 九州大谷短期大学 日本語コミュニケーション学科 演劇放送コースの23期生卒業公演であるこの舞台は、全体的な緊迫感が若干弱いものの、単調になりがちなところに遊びをうまく配して飽きさせなかった。

 青年貴族・アルセストは、誠実・厳正を尊ぶあまり自分にだけではなく他人にも厳しい。その彼が社交界の悪風に染まった未亡人・セリメーヌに恋をしてしまい、セリメーヌの愛を独占しようとするが、セリメーヌの棲む虚偽に満ちた社交界と相容れず挫折していく。

 人物の心の動きを追った端正な原作で思い切り遊んでいるという舞台づくりだ。その遊びの部分につい引っぱられてしまうが、それでもまったく破綻の気配さえないのは原作の骨格がきちんとしているためだろう。
 遊びは、時事ネタをセリフに盛り込んだり、人物のキャラや動きに今ふうのギャグをかましたりといったことをやりまくる。そのことで笑劇的な軟らかい雰囲気になった。
 舞台転換時には大きなテレビ画面の枠が降りてきて、歌ったりコントが演じられたりする。舞台転換そのものが楽しめるこの観客を飽きさせない工夫はいい。

 ひとつひとつのセリフは長いが、俳優はやや早口でうまくこなしていて全体のテンポはいい。
 それらをうまく支える、装置、照明、音響などの小劇場の設備がいいのには驚く。これだけの演劇のための小空間は、福岡市内にはないのではないだろうか。

 そのように楽しめる舞台だったが、解釈と表現に差があるのが惜しい。
 役を俳優の生身に引き寄せすぎていて役が跳ばない。そこにもう少し落差があってもよかったが、そのためには極端な形から入るというアプローチがあってもよかった。

 演劇人を養成している短大・大学は九州ではここだけだから、総合的な実力を知るためにも、共同作品でもいいからオリジナルを見たかった。演出も学生がやったほうがいいと思う。


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