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《2003.2月−8》

舞踊「鷺娘」の◎ほとばしる情念
【坂東玉三郎特別公演 (松竹・博多座)】

構成:坂東玉三郎
11日(火・祝) 12:00〜15:25 博多座 3150円


 今月の博多座の 坂東玉三郎特別公演 は 玉三郎 の魅力たっぷりで楽しめたが、特に「鷺娘」が激しい恋情をこれでもかとばかり表現していて迫力だった。

 「壇浦兜軍記 阿古屋」では玉三郎がみごとな楽器演奏を見せる。約1時間15分。
 重忠(染五郎)は、景清の行方についてのその愛人・阿古屋(玉三郎)を詮議する。拷問を強行しようとする岩永(弥十郎)をさえぎって、重忠は阿古屋に琴、三味線、胡弓を弾かせてその音色で阿古屋の言葉が真実か見極めようとする。
 三人の駆け引きが見所だ。それに決着をつけるのが阿古屋のみごとな演奏で、納得できるところまでじっくりと玉三郎が聞かせる。伴奏の三味線などとのからみも微妙なところまでていねいに演奏されている。

 「棒しばり」は音曲も入って派手に楽しませてくれる。約40分。
 主人(弥十郎)は留守中に酒を飲まれないよう策によって、太郎冠者(勘太郎)をうしろ手に、次郎冠者(染五郎)をその両手を棒で縛ってから出かける。しかしふたりは協力して酒を飲む。
 狂言に材を取っているが、歌舞伎は長唄・囃子がつき踊りもたっぷりとあり派手だ。前半、棒術の型を見せる染五郎の踊りが楽しい。後半は、縛られたままで酔っ払っての踊りがユーモラスで、特にふたりで踊る連れ舞いが楽しい。

 「鷺娘」は、身を焦がす恋の思いを白鷺の精による踊りを通してみごとに描く。30分弱。
 真っ白な着物の娘から真っ赤な着物の町娘になり撫子色の着物に一瞬に変わる。いったん去って再度の登場では青紫の着物の年増でさらに桃色の着物に一瞬にし変わる。鮮やかだ。そして降りしきる雪のなかに衣服は乱れ髪振り乱した半狂乱の女は倒れる。えぐり出された恋情のすさまじさ、その凄みのある美しさに圧倒される。
 娘の衣裳を除けば舞台は白と青だけの静謐な世界。長唄囃子連中の裃と袴まで青というその舞台美術に瞠目させられる。

 この公演は前売りはほとんど売り切れていて立ち見で観た。玉三郎の魅力を堪能した。


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