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《2003.2月−10》

ひとりよがりで◆白けた
【名医の悲劇/MVP Soul wings (貌スタジオ)】

作・演出:靖田和輝/作:靖田和輝 演出:波爛万丈
15日(土) 19:00〜21:55 西鉄ホール 招待


 第一部「名医の悲劇」は、観ているのがつらい舞台だった。かなりウトウトしたし、観ていて疲れが肩にのしかかってきてやるせないという感じにさえなった。
 第二部「MVP Soul wings」の歌で何とか少し救われたが、作品のレベルを客観的に見て助言するようなプロデューサー役が必要なのではないだろうか。

 「名医の悲劇」は、脚本も演出も上演できるレベルに到達していない。上演時間は約1時間45分。
 脚本は、大したことは語っていないのに回り道ばかりのなんというダラダラとした展開だろう。アイディアは、「相手の痛みをほんとうに感じ取れるようになった医者」といいのだが、例えば製薬会社のプレゼンをしつこく語ることに長い時間を費やしたりといった引き伸ばしとも思えるようなエピソードばかりが多く、ストーリーを多彩にするどころか平板にしてしまった。手際よく再構成すれば上演時間は三分の二以下で済むし、スピードアップして観客も白けないで済む。

 演出は本来のおもしろさを引き出すことなく、小手先ばかりにこだわっている。作者が演出したことで脚本の不備は是正されるどころかむしろ強調された。絶対に他の人が演出すべきだった。演出には、平板な脚本を少しは構造的に立たせる工夫があってもいい。悪ふざけと内輪ネタに近いようなところでやられては、白けに拍車をかけるばかりだ。
 そんなふうだから、俳優はやりようがなくてやけくそのように見えた。それでおもしろかろうはずがない。

 「MVP Soul wings」は、MVPの歌が聞かせる。上演時間は約40分。
 ブルースは圧倒的な安定感だし、ラップも楽しい。歌の盛り上げ役ともいえるその間をつなく芝居は「名医の悲劇」よりも圧倒的にいいが、それでも歌だけ聴いていたいという気になる。

 第一回公演から西鉄ホールで3ステージという意欲はいいが、内容が伴ってほしかった。これだけの才能が集結しながらこんなものでいいはずがない。近いうちのリベンジを待つ。
 第1回目のステージを観たが、半分ほどの入りだった。


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