きらら番外公演であるこの舞台は、語り手がいてストーリー性を強調した作りでまあ楽しめるが、すーっと終わってしまったという印象だった。本公演と違ってそのようなねらいだったのかもしれないが、もう少しズシンときてもよかった。
「集団」の力を発揮させた男の挫折のものがたりだ。
弱小で貧乏な村に来て村長にさせられた男・きんぴら。他の村に略奪されてばかりいることはないと、村人を煽って他の村を襲撃する。そしてついには山賊村と呼ばれるまでになってしまう。
だが大きな権力が現れて、村を助ける代わりにきんぴらの死による償いが要求される。
いつもながら舞台のセンスはいい。
キャスター付きの衝立は、襖や壁はむろん効果音を発したり打楽器にまでなる。舞台の転換はスムーズだ。
俳優はみな個性的で、よく鍛えられていて的確な演技で、もちろん破綻はない。集団の演技もきっちりと決まる。
村人の白と黄色の衣裳などのセンスもいい。そういう面は楽しめる。
そのように工夫されてよくできているにもかかわらず、なぜズシンとこないのだろうか。
ひとつは語りが強すぎるということ。舞台を俳優の演技が引っぱっていくというよりも、語りを俳優が追っかけているという印象が強いのだ。それは俳優の動きから新鮮さを奪い人物を類型的にしてしまった。
また、対立と乗り越えるべきものが弱いのだ。例えば、きんぴらは襲われた側のつらさがわかっていながら襲うことに何の躊躇も見せない。力さえつけばいいというストーリーの単調さをそのまま押し切る。終幕近くに再会するヤイバという他の村の首領とのコントラストもからみも弱い。
語りすぎを補正し、人物や話の構成にもうひとくふうほしかった。
この公演は福岡では3ステージ。あじびホールの半分ほどが舞台で客席は比較的狭い。桟敷にやや空きがある程度だった。