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《2003.2月−13》

演技と脚本に☆★課題
【カブールから来た男 (天地)】

原作:ロビンドドナト・タゴール 脚本・演出:プラティプ・ニガム
22日(土) 19:00〜20:35 ぽんプラザホール 招待


 選んだ原作はおもしろく演出も工夫されているが、脚本と演技のパワー不足のために演出意図が透けて見えてしまったという舞台だった。
 可能性は感じさせても、この舞台をみる限り不満も多い。

 妻と娘をアフガニスタンに残してカルカッタまで来て胡桃を売っているカブリワラ(カブールから来た男)。そこで劇作家ゴーシュ先生の小さな娘ミニーと仲よくなる。しかしカブリワラはトラブルで10年間牢獄につながれる。
 10年後、牢を出たカブリワラはミニーに会いに行くが、その日はミニーの結婚式の日。ミニーの父は、カブリワラが早くアフガニスタンに帰って娘と会うようにと、ミニーの結婚式のパレードをやめてその金をカブリワラに渡す。

 脚本が弱いのは、思いの表現があっさりとしていて平板なこと。
 第一幕(約55分)はカブリワラが牢につながれるまでだが、セリフの繰り返しも多く、意図する「情」に至るまで深まっていかない。ウトウトしてしまった。
 第二幕(約25分)はあまりにあっけない。自分の娘の結婚式のパレードをやめてまでカブリワラを娘のもとに帰そうととするまでのゴーシュ先生の思いの表現は不十分で、あっさりとすっ飛ばしてしまうという印象だ。もっとじっくり書き込んでほしかった。第二幕がそのままであるなら、幕間の15分の休憩は不要だ。

 演出は工夫されている。
 舞台のいちばん前でメインのドラマが演じられる。装置は襖大の絵がふたつだけ。そのうしろに横長くほとんどの出演者が座って、バザールの商売人を演じたり歌やダンスをしたり擬音を発したりする。このかたちは、バザールぼ場面のにぎゃかさをうまく表現し、全員による歌やダンスにスムーズに移られる効果を上げていた。中央奥に器楽演奏する俳優がふたり。生の打楽器とテープを組み合わせた音楽が効果的だ。

 そのような演出に俳優の技量がまだついていっていない。
 それがどのように現れたかというと、まず、ドラマの部分とそれを区切るための歌・ダンスの部分が豁然としないことだ。メインのドラマはカッチリ、歌・ダンスはカラリ開放的という切り替えの気持ちよさは発揮されない。男女ふたりによる語りとメインのドラマとの関係についても同じで、ダラダラ入れ混じるという印象をまぬがれない。
 なぜそうなるのかというと、俳優がきちんと動けていないためだ。中途半端な動きが多くメリハリがない。無駄な動きも多すぎて印象を発散させる。
 発声についても動きと同じことが言える。はっきりしない中途半端なしゃべりを個性的と勘違いしているのではないか。
 動きも発声も、まず的確で素直な表現ができることが基本ではないだろうか。

 この劇団らしい演劇への取り組みの真摯さ熱心さで、述べてきたような欠点を早く克服してさらに質の高い舞台を見せてほしい。
 この舞台はきょうとあすで4ステージ。きょうの夜の回は7〜8割という入りだった。


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