福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2003.5月−2》

気の抜けたビールのような舞台
【花の紅天狗 (新感線GTBW)】

作:中島かずき 演出:いのうえひでのり
2日(金) 19:05〜22:05 メルパルクホール福岡 6000円


 この舞台は新感線らしくない、気の抜けたビールのような舞台だ。
 その原因は主に脚本にある。長いたいくつな芝居で、ラスト15分でつじつまだけあわせようとしても無理だ。演出がどう頑張ってみても、鬼面人を驚かすだけではどうしようもないという見本のような舞台だった。

 「紅天狗」という作品の上演をめぐる話だ。
 月影花乃丞一座の花形役者・カケルに活を入れるための当て馬・茜というそば屋の出前持ちの女性が、実はすごい才能があって、カケルのライバルになって「紅天狗」を争う。それに、その作品を乗っ取ろうとする悪徳プロデューサーなどがからむ。

 脚本の欠点は、ドラマの希薄さを小手先のアイディアでカバーしようとしたことだ。
 「ガラスのカメ」が出てくるところからも、何を意識して書かれたかはすぐわかるし、全体的に演劇のパロディが散りばめられてはいるが、それらが一体とはなっておらず、ダラダラ並存しているばかりだ。だからグイグイと引きつけられることはない。
 人物の関係は進展せず、「実は実は」というドラマ作りだから、ストーリーに興味がもてない。結末ははじめからわかっているという気さえする。

 そのような脚本なのをいくら派手にきらびやかにやられても、いかにも空々しい。
 第一幕ではかなり眠っていたし、隣の席のふたり連れは第二幕を観ずに帰ってしまった。暇だから、前から15列目というそれなりの席から単眼鏡で俳優の表情を追って遊んでいた。
 そんな気分が私だけでないようなのは、劇中劇にほとんど拍手がないことからもわかる。

 俳優も弱い。充実しない演技を見せつけられてイライラしどおしだった。
 池田成志や高橋由美子の演技はかなり無理をしており、力めば力むほどに存在感は宙に飛び散り、ド派手な照明や音響に対峙などできない。完全に力負けしている。期待していた粟根まことも演技のしようがないという感じで、まあおもしろかったのは川崎悦子と逆木圭一郎くらいだった。古田新太、高田聖子、橋本じゅんのあふれるエネルギーの迫力を改めて思った。せめて三人のうちの誰かひとりでも出てほしかったよぉ。

 この舞台はきょうとあすの2ステージ。きょうは1階席は半分くらいの入りだった。
 アートリエの優待割引チケットで、S席7300円のところを6000円で入場したが、観客が少ないためかなりいい席だった。どうせなら4000円くらいまで割引価格を落として満席にしてもらったほうが演るほうにも観るほうにもいいのかなという気がした。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ