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《2003.5月−5》

気分悪くなってしまった
【棚ぼたのベクトル (パンチ★楽Rush)】

作:さとうひろみ 演出:山下沙織
11日(日) 13:00〜14:10 ぽんプラザホール 1000円


 気分悪くなってしまったが、それは、内容による気分悪さではない。
 あまりにつまらないからうんざりなのに、作る側にはそんな認識はない。そんなレベルの低さにつきあわされるから気分が悪くなるのだ。

 脚本は、繰り返しが多く、人物にも魅力なく、セリフも陳腐で冗長だ。
 男の借金のかたに妹ふたりをソープに売り飛ばそうと、妹たちが営む喫茶店にやってきた二人の取立て屋。その妹たちは喫茶店がつぶれかかっていて自殺トライアル中。
 それに、男女ふたりの刑事、男の婚約者の大金持ちの女性がからみ、さらに、人質強盗事件とされて警察・自衛隊が出動する騒ぎ。(最後の15分は眠っていたので結末はわからない。)

 そのような脚本だが、うまくやればまだ何とかなるのに、演出も演技も工夫しないどころか、わざわざマイナス効果ばかりをねらったとしか思えないひどさで、脚本をさらに縮こまらせてしまった。
 演出のマイナス効果は、コンセプトを無視し、ただ平板にダラダラと俳優の身勝手を野放しにして演じさせたこと。状況設定をうまく強調すれば、少しはおもしろさを引き出せたはずだ。
 演技のマイナス効果は、どうしようもなく稚拙なこと。素直にしゃべればいいのに、なぜ悪い方向にデフォルメするように演じるのだろう。アゴを突き出してしかしゃべれず、しかもメチャクチャの絶叫調が演技だと思い込んでいる。そのような幅のないなまくらな演技が何の工夫もなく舞台にゴロゴロしていて、見続けるのが苦痛だった。

 この舞台はきのうときょうで3ステージ。私の観た回は半分ほどの入りだった。


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