ブロードウェイで上演されたこの作品は、2000年度のトニー賞のベストミュージカル賞を受けている。私はその舞台が観たくて、2001年1月にニューヨークに行った。すばらしい作品だった。印象は今も鮮烈に残っている。
日本でこんなに早く上演されるとは思わなかった。しかも、東京からそれほど遅れずに福岡で観られるというのもすごい。ニューヨークで観たときはそれほどすごいダンスシーンとは思わなかったが、四季でのメイキングをテレビで見たりしていたら、たいへんなダンスだとわかった。
今回の観劇は当然にブロードウェイと比較しながら見た。そして、ダンスについてはむずかしい振付をみごとにこなしていて遜色はないが、役の個性の表現には少し差があるかなと思った。
3つのパートに分かれているオムニバス作品だ。
PARTT「SWINGING」は、約15分の上演時間の小品。
18世紀のフランスあたりの貴族のピクニック。ブランコ遊びの途中に貴族の男性はシャンペンを取りに行く。その間に貴族の女はブランコの上で召使と浮気する。
ブランコの上でのセックスというアイディアを、みごとに振付けていて見せる。この作品はブランコ上も含めたダンス中心のため、ブロードウェイの舞台とほとんど変わらないできばえだ。
PARTU「DID YOU MOVE ?」は、上演時間約30分。
1954年のニューヨークのレストラン。マフィアの妻の、夫が席を立った間の白日夢(妄想)が描かれる。
ダンスのところはいい。しかし、若干あるセリフの、いかにも四季調の大味なしゃべりが感興を削ぐ。
役の個性の表現も弱い。妻の役には、キュートさとユーモアが不足している。他の客やウェイターの個性も弱い。ブロードウェイでは衝撃的だった下働きの老人のノロノロ動きにもインパクトがない。ダンス以外の部分での俳優の表現力の弱さが出てしまった。
PARTV「CONTACT」は、約65分の作品。
1999年のニューヨーク。成功した広告代理店の42才の重役が、人生に虚しさを感じて自殺しようとする。その状況のなかで見る幻想のなかに現れるイエロードレスの女性にアプローチする。
セクシーなダンスは難しい振付もあるが、ここでも四季の俳優はみごとにこなしている。堪能できる。ポスターでチンチクリンに見えたイエロードレスも、このステージではみごとなプロポーションとダンスで魅力的だった。
不満なのはやはり性格の表現としゃべり。主役の重役にブロードウェイの舞台で際立っていた男の哀愁がほとんどないから、作品としての深みが出てきにくい。ストレートプレイも歌もダンスもこなせる幅広い俳優が要るのだと思った。
この作品は福岡では、5月11日から7月6日まで56ステージ。5月30日のソアレ公演で日本公演通算400回という。
なお、ブロードウェイの「コンタクト」の感想は、ニューヨーク観劇旅行記 に載せているので、よかったら見ていただきたい。