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《2003.5月−10》

楽しめるが、ややこじんまりが不満
【4649 (PA!ZOO!!)】

作:あみる 演出:うみのはいね
24日(土) 13:00〜14:20 ぽんプラザホール 1200円


 PA!ZOO!! は、いま福岡でいちばん楽しめる劇団だと思う。脚本も演出も高いレベルで安定していて、毎回違ったテーマの作品をみごとに見せてくれる。演技の切れも小気味いい。今回も大いに笑った。

 老人たちの一大イベント「水無月の会」が一週間後というのに、老人会・紫蓮会では出し物が決まらないどころか、会員もボランティアもやめてしまい、残ったのは、老人会はふたり、ボランティアは元ヤンキーのひとりだけ。
 その元ヤンキーが応援に先輩の現役ヤンキーを呼び寄せたところから起こるドタバタを描く。

 ていねいな脚本を、ていねいな演出で、ていねいに演じている。それで、勢いがある。実にテンポいい。
 デテールまでていねいに描かれることで、全体に生き生きとした緊張感が行きわたるから、人物の本音が漏れるような、ちょっとした動きが笑いを呼ぶ。
 ていねいさは、例えばヤンキーが好きな飲み物は「ビックル」といった小道具の扱いにもうまく現れている。壁に貼られたポスターなどもいかにもそれらしく、きっちりとしている。
 役者も、やや強調されたキャラクタを演じるのを楽しんでいて、いい。

 そのように楽しめるウェルメイド・プレイではあるが、不満は、エンディングへのソフトランディングを狙って、こじんまりしてしまったことだ。
 行き違っていた夫婦の和解にドラマの核が絞られるのも不満だが、その不和の原因と和解への道筋もチマチマしすぎだ。知り合いの女性に頼まれた番組の録画を、妻のいちばん大切にしているビデオ8本(!)に録画した、というのは何とも納得しがたい。生ビデオ買えばいいじゃん、と、こじつけたストーリー展開が少し白ける。
 ここはおもいきりハードランディングでもいいし、不条理劇風にランディングなしというのもいい。それくらいこの劇団の俳優なら十分こなせるし、別な面が出ておもしろいに違いない。

 この舞台は全部で7ステージ。私の観た回は、若干空席がある程度だった。


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