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《2003.10月−1》

内容のなさにうんざり
【パンドラ (K2T3)】

作・演出:後藤香
5日(日) 17:00〜18:35 ぽんプラザホール 2000円


 アイディアのスケールが小さ過ぎて、作品が膨らまない。
 ほんとうのところが顕われると白けてしまうという、その内容のなさにはうんざりした。

 劇団の稽古場が舞台。
 主宰の一条を待つ劇団員たち。そこに「あけるな」と書かれた小さな箱。気になる劇団員たちの妄想は膨らむばかりで、中身は見たいが自分は開けたくないから管理人のおばちゃんが開けるように仕向けるなどというやりとりがかなり続く。
 一旦こっそりとあけられた箱の中はカラッポ。そこに、鍵を無くしたと大騒ぎをした管理人のおばちゃんが、自分が持っていたのをごまかすために鍵を入れ、一条が自分に気があると思い込んでいる三津枝が、そのことをアピールするためにその証拠写真を入れる。
 が、なぜか登場する一条の妻を安心させるために、二階堂は一条から妻への偽の招待状を入れて、鍵と写真は自分が預かる。あけられた箱から出た招待状を一条の妻は簡単に偽物と見破り、おばちゃんは鍵のことを告白し、三津枝の思い込みは勘違いだとわかる。

 前半は、箱になぜ「あけるな」と書かれているのか、と、主宰の一条がなぜ遅れているのか、で引っぱるが、時間稼ぎの出し惜しみばかりで、引っぱりすぎていて白ける。
 後半の謎解きはどうしようもない貧相さだ。鍵のことはドラマにも何もなりはしないし、一条と三津枝のことは単なる三津枝の思い込みでなんということもない。一条が遅れているのはただ道に迷っただけだと。あ〜あ、ここまでみごとに何もないというのでは、期待しただけ損したという腹立たしさしか残らない。
 パンドラの箱に対するみんなの妄想をもっともっと荒唐無稽に膨らませてもよかった。一条と三津枝は不倫していたほうが圧倒的におもしろいのに、みごとに逃げる。

 結局みんないい人ばかりで、きれいごとが過ぎるのだ。
 解決すべき課題さえもなく、だから何も乗り越えることもなく、鼠一匹も出ず、作品はみごとにペシャンコだ。
 本編がそんなふうだから、ギリシア神話の「パンドラの箱」の劇中劇だけがおもしろかろうはずもない。

 この公演は3日間6ステージ。最終ステージを観た。若干空席があった。

 ぽんプラザホールに行く前に博多駅を通ったら、ふくこいアジア祭りのパフォーマンスをやっていた。「美勝女隊」という平均年齢9歳というグループのパフォーマンスがみごとだった。
 今週末は仕事とプライベートで忙しく、前売り券を買ったり招待券をもらっていた公演も含めて観たい公演がいくつも観られなかった。観たかったのは、黒テント「金玉ムスメ」、道化「西鉄ライオンズが強かった頃に・・・」、ショーマンシップ「閨秀二女伝」、オリガト・プラスティコ「西へ行く女」、くうきプロジェクト「笑いのコラーゲン2」、怒幻鳥栖ッ都「キザシ」で、最高にうまくいっても全部は観られていないが、それにしても残念。


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