問題点は多すぎるほどあり、結末も途中から見えてしまうのに、それでも最後まで見せられてしまう。3時間を超える上演時間だから途中ウトウトすることはあるにせよ、何となく気になって見せられてしまうのはなぜだろう。
1930年代の暗い時代を上海に生きる人々を描く。
上海の社交界の花・陳白露は、銀行家・潘月亭の情人となって享楽的な生活。それをまともな生活に戻そうとする幼なじみの方達生。かれらのまわり悲惨なあるいは豪奢な生をを生きる人々を絡める。
都市の享楽から抜ける気はない陳白露は、潘月亭が失敗して破産して初めてそのような生活があだ花であったことを知るが、まともな生活に戻りようもなく、自殺する。
演出は、大きな構想よりも、ごく素直に戯曲に向き合って、そこに書かれたことをていねいに掘り起こして舞台にかけようとする。そのような姿勢で取り組んでいるから、熱意とか工夫が伝わってきて、何かと気になり、つい見てしまう。
リアリズム作品であるこの戯曲を読み解き形象化しようという意欲は、俳優のレベルが低くムラがあるために十分には実現されない。その結果、この戯曲の骨格の部分は少し感じとれても、ごく自然な日常生活の機微などとても表現できない。
言葉のすわりの悪さとテンポの悪さが気になったが、それは演出家が外国人であることを考えると、しかたのないことだろうか。
キャスティングは大胆でアンバランス。
俳優の地と訓練不足が丸見えで、俳優は役を徹底的に自分に引き寄せるから作品もアンバランスだが、それが魅力と感じられるところもあるのは、そのことが思いもかけぬ方向に戯曲を広げているからだろう。意図的にそれをやっているとしたら大したものだが、全体的な演技の粗っぽさからみて、とても意図的とは思えない。俳優の肉体のテンポに引きずられて、作品が間延びしてしまったところもある。
この舞台は3日間4ステージ。ラストステージを観た。ほぼ満席だった。
この舞台に予想外の時間がかかってしまい、劇団翠平船公演「救世の櫻花―ぐぜのはな―」が観られなかった。