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《2003.10月−10》

舞台は美野島一帯というのが何とも
【傾いた家 (みのしま連合商店街振興組合)】

作・演出:飯塚俊太郎
20日(月) 19:10〜20:55 美野島・八女青果 野口アパート2F 1500円


 WAHAHA本舗の飯塚俊太郎によるひとり芝居だ。
 ひとり芝居といえば、フリもまじえた独白劇が多いが、この作品の観客の眼だけを現実そのものの中に置いた独演劇という形がおもしろかった。ひとりのシーンをひとりで演じ、内容はリアルタイム。どっかで行われたことをしゃべるのではない。
 ただ、演技がかなり粗っぽくてうわすべりで、ほんとうの意味でのリアリティが弱く、思いの表現も膨らまず生活感覚も薄く、なかなか心の襞まで表現できていないのが残念だった。

 観客は午後7時に美野島商店街の餃子屋「皇厨」に集合し、そこから飯塚俊太郎の先導で 美野島橋通り商店街をゾロゾロと歩いて、2、3分のところにある野口アパートに行く。急な階段を昇ってその一室に入る。下駄箱の上にビリゲンさんの小さな像があるが、全体的には殺風景。間取りは2DKで、観客は和室のひとつに20人、DKに7、8人が席を占める。
 午後7時10分からの前説で観客は5つの約束をさせられるが、要は 観客は「空気」になれ ということ。

 安田川春太郎という42歳のうつ病の独身男性の話。上演時間はけっこう長い1時間半。
 お見合いパーティで知り合った女性から振られたあと、うつ病の女性・ちえみ とメル友になり、その彼女を元気づけるのが生きがいになり、彼女に恋をしてしまう。その ちえみ が突然会いたいと言ってきた。春太郎は胸ふくらませて会いにいくことになるのだが・・・。

 風呂に入った音楽を聴いたりの日常の生活から、家の中で線香花火をしたりコンドームを膨らませて割ったりというかなり特異な生活までを、観客は至近から見つめることになる。その、生活を「覗く」という趣向でこの舞台はもっている。
 だんだんと ちえみ に傾斜していく春太郎。その様子は、春太郎の担当医がうつ病になってしまうというエピソードなどとともにケータイで語られる。やや硬く思いがなかなかうまく伝わらない。もう少しじっくりと進めたがいい。

 ちえみ に呼び出された春太郎、意気揚々と出かける。観客はその後ろをゾロゾロとついていく。美野島橋通り、美野島通り、百年橋通りを通って竹下駅近くの公園まで、10分以上も歩く大遠征だ。
 公園に着いて、どうなることやらと思っていると、公演の入り口付近にちえみ (小柳有紀)が現れる。あわてて走り寄る春太郎を、観客もあわてて追っかける。

 衝撃的な ちえみ の告白―うつ病というのはウソで、卒論のためにうつ病のことを調べていただけだった。ちえみ は、別れを言うために呼び出したのだった。
 走り去る ちえみ に、呆然と立ちつくす春太郎。雑音だらけのラジオで「翼をください」を流しながら悄然と歩く春太郎の後ろを、観客もゾロゾロと歩く。
 自宅に帰ってから春太郎は立ち直って「ガンバロー」となるのだが、これはちょっと簡単すぎ。

 いっしょに来てあったWAHAHA本舗主宰の喰始によると、きょうの舞台は東京公演に比べて単調でおもしろくないということだった。東京では文字通り「傾いた家」での上演で、その家の効果も大きかったらしい。
 東京では、各ステージ10人限定ではあったらしいが、1ヶ月の公演後1週間の追加公演があったということだ。きょうは報道関係のかたも合わせると30人弱で、定員オーバー気味。25日まで6日間6ステージが上演される。


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