「踊りに行くぜ!!」は、全国各地で開かれたオーディションで選ばれたダンサーの踊りを、全国の観客に見てもらおうというイベントで、福岡では今年で3回目。
いままでに観たことがあるダンス公演に比べて表現の幅が広く、舞踏との垣根はもうないのかな、という気がした。
福岡でのオーディションで選ばれた2組も出演したが、関東や関西のダンサーに比べて、「これでもか!」という”しつこさ”が弱かった。
○長尾忍〔佐賀〕「なんだ・なんだろう」(振付・演出:長尾忍)
長尾忍のソロで、緩急をつけた動きのいいダンス。カッコ悪さを意図的に作り出し、極端な形や動きで身体の奇形さを強調する。構成的には全体的にやや単調。上演時間15分弱。
○GAMADASUダンス研究所〔北九州〕「ストライプ」(振付:つかのみき)
出演は女性3人。その3人の関係でうまく見せる。途中、本の朗読があってびっくりしたが、やはり構成が弱いのか時に眠たかった。上演時間15分。
○森下真樹〔東京〕「デビュタント Debutante」(振付:森下真樹)
下手にマイク。途中からその前で「モリシタチキチキマキバンバン」とか「ナンジャカンジャデ27」とか自己紹介し、その言葉に合わせて動きはいいが硬い踊り。女ということが前面に出ている。
FDH優勝の話を観客に小声でしたり、マイクを持って唄ったりしたあと客席を駆けると、マイクが6本に増えている。それを舞台に円形に並べ中央にマイクスタンドを立てる。並んだマイクが男根に見えてしまった。上演時間20分弱。
○塩澤典子〔前橋〕「ギギギギファーファーファーボボボボウーウーウー」(振付:塩澤典子)
ほとんど定位置で身体の一部を動かすだけというダンスだが、髪を前に垂らして幽霊さながらというダンスが前半続く。後半は顔は見せるがだんだん内へ向かい、縮こまって寝てしまったところから、明るくなる照明とともにやさしく外に向かい始める。
単調なのに目が離せず、眠くなることはない。その不思議な魅力。上演時間15分強。
○砂連尾理+寺田みさこ〔京都〕「女時男時」(振付:砂連尾理、寺田みさこ)
いろんな人の断片的なことばの録音に合わせて踊るところから始まる。求める女に対しはじめ反応が鈍い男だが、じっくりと近寄り、寄り添い、絡み合う。そのような男女を表現していてなまめかしい。その表現は、ユーモラスに見えるほどに研ぎ澄まされている。ピンポン玉の使い方もなかなかいい。上演時間25分強。
全体的に振付は、大股開きで仰向けなどの露わな格好のオンパレードだった。
肢体の形の美醜へのこだわりを捨てた振付だ。コンテンポラリーダンスの一流が形のよさから逃れられないのに比べて、形のよさを求めずかっこ悪さを許容した表現の広さがあった。そのあたりが新鮮だった。ただ、もう少し洗練されてもいいところもある。
終演後、アフタートークが約30分。
塩澤典子 と 寺田みさこ の顔を隠したダンスの狙いを聞いてその差がよくわかった。また音楽とダンスとのかかわりあいについて、ダンスが先にあって、音楽をあとからつけるという発言があったのがおもしろかった。
福岡では1ステージ。若干空席があった。