田坂哲郎作品にしてはめずらしく重たく、観おわったら肩が凝っていた。
比較的単純な民話を大きく膨らませた大掛かりな構成に加え、アイディアもたっぷりで、一段とスケールアップしていることは喜ばしい。
ただ肩が凝るのは、語りすぎていて少しばかりくどいことと、アイディアに質の悪いものが混じっているためだろう。
池の主・千鳥が、池に身投げした人を助けるために、池で死ねない千鳥が池。だからまわりは首吊りだらけ。池には蛇がおらず、そこには蛙が異常発生している。
そこは虚と実の境目で、千鳥は実はヤマタノオロチの末裔の蛇で、虚を封じ込めている。それを守るための鍵となるクサナギの剣をめぐっての戦いへと、話は民話世界から大きくスケールアップする。
福岡県の民話「千鳥が池」にはくつかのパターンがあるようだが、メインといえるものでは、池の主が千鳥という蛇で、身投げした人を助けるので死ねない、というごくシンプルな話をもとに、ヤマタノオロチ神話をからませて大きく膨らませている。空間の広がりは黄泉の国におよび、黄泉がえりさえもある。
そのような虚構性の大きな広がりを支えるみごとな構成はいかにも田坂作品らしいが、リアリティを持たせることにだんだん長けてきているように見えるのは、客演の俳優が充実しているということもあるだろう。
そのような広がりのあるシーンをテンポよく積み上げていくのはみごとで、それぞれのシーンもくっきりとしている。演出上のアイディアもたっぷりで飽きさせない。
歴史上の事実の取り込みがやや適当すぎるなど若干の欠点はあるにしろ、そこに仮託して熱とボリュームのある舞台を作り上げたことを評価したい。
この舞台は 非・売れ線形ビーナス第4回公演で、嘉穂劇場復旧応援企画とされていて、カンパはそのまま嘉穂劇場に募金される。公演はきょうとあすで4ステージ。ほぼ満席だった。