よくできた戯曲だ。
謎を残しながらラストまで引っぱってみごとなどんでん返し。そこにサスペンスものの舞台の楽しさを満喫した。
新婚3ヶ月の妻が失踪して10日。心配する夫のもとに神父に付き添われて帰ってきた妻は、妻とは別人だった。
3時間近い上演時間という長い戯曲なのに、よく練り上げられていてセリフにまったくムダがないというみごとさだ。
そのセリフをたたみかけるようにきっちりとやりとりする。そのテンポのよさはみごとで、状況変化の切れもよく、ミステリアスな気分をうまく高める。
勘のいい人はどんでん返しを予想できたようだが、この舞台は私の勘の鈍さに合っていて、ラストまでそのからくりがわからず、みごとにはまってしまった。
伏線はあって納得はできるのだが、ラストから巻き戻してみるとたぶん観客を錯覚させるための不自然さもあるだろうが、まあいいやという気になってしまう。
それにしても夫役の山本學、中年とはいえ新婚3ヶ月というのはどうも無理がある。柔軟な演技力は認めるが外観も重要だ。神父役の名高達郎と交代したほうがまだ自然だ。部長刑事役の金田龍之介の圧倒的な存在感がみごとだった。
この舞台は福岡市民劇場9月例会作品で、2日から12日まで11ステージ。わずかに空席があった。