なかなか発想のいい中村雪絵の特長が表れた脚本で、詰め込まれたいっぱいのアイディアが楽しい。ただ、構成が大きにはいいとしてもややいびつなのと、輪郭がぼやけた感じでうまく定着しきれていないところがあるのが惜しい。
かってひとつにまとまっていたが、今は4つに分裂してしまった谷の村。それをおにの恐怖でまとめようとするのだが、肝心のおには気が弱い賢くなくて人間にすり寄ってばかり。
そのおにに陽という子をさらわせて人々の恐怖心を煽ろうとするのだが・・・。
どこまでもどんどんと展開していく大きなストーリー。そのストーリーを、発散してしまうことも尻切れトンボになることもなく、ラストまでもっていくのはいい。谷と地獄とを重ね合わせる重層性を持たせた構想や、母殺しなどの事件、見えない人物などなどたっぷりで、才気溢れる発想のよさだ。
ただ具体的な構成となると、中盤で話がループしているようなところがあってかなり眠くなったから、まだまだ工夫の余地がありそうだ。閻魔大王のなれのはてが「かっかっかっおに」だったというような話の核となるようなところを、話が進んでしまったところで謎解き的に説明される。そのようなことにも違和感があった。
大事なことが言葉でサッと説明されるためにうまくついていけないところもある。ストーリーがかなり入り繰るから言葉での説明もやむを得ないだろうが、二重写しになったり輪郭がボケたりと、うまくフォーカスしないところがかなりもどかしい。
女性4人で、中心となる役のほかに洗濯女や子どもなど10をはるかに超える役を演じて、いくつもの時空を存在させる。観客には見えない”番”という役を登場させて、そのいくつもの時空を繋ぐ。
4人の女優は役にしつこく食い下がっていて、役の多彩さもあってそれぞれに魅力的だ。おにのさかい万希子の哀しみの表情がみごとで、羽二重の三坂恵美はのびやかな演技でじっくりと見せる。陽の木村佳南子のスッキリ見えるがネバリもあるという演技もなかなかいい。
この舞台は劇団ぎゃの第5回公演、くうきプロジェクト ワンコインシアター第17弾で、きょう2ステージ。40人弱の観客だった。