福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2004.9月−8》

状況設定についていけない、演出と演技
【あやまりません (池田商会)】

作:池田祐樹 演出:安倍祐馬
19日(日) 13:05〜14:30 ぽんプラザホール 1500円


 全然ダメというわけではないがおもしろさはいまひとつだった。今回は再演で、3年前のこの作品の初演はものすごくおもしろかったのだが。
 ストーリーはあるが、各シーンはコント仕立て。そのコントがジメジメしているところがおもしろくなさの原因だ。

 UFOの来る村に宇宙人を探しに行く女のまわりに警官とコンビに店員と万引き少年とその母親。少年の父の死と関係があるコンビニ店員に母親は再婚を迫る。
 かたや、青年を4人も誘拐して全部サトシという名前をつけて幽閉している夫婦は、サトシたちの借金を肩代わりしてやってその記憶を消してやるという偽善が生きがい。
 そのような村に、ここで神の出現を待つという宗教家が信者ふたりと現われる。

 このかなりバカバカしい脚本に合わせて、もっとマンガチックにハチャメチャ風に超ハイテンポにやったほうがよかった。
 この舞台では、女・警官・店員グループについてはまあ見られるが、夫婦・サトシたちグループについてはほとんど不発で、宗教家・信者たちグループのインパクトも弱い。その差は何だろうか。
 コント調のそれぞれのシーンを演じるとき、俳優自身の”素”からいかに離れるか、そしてテンション高くしかも変幻自在に豹変できるかがポイントだろう。ましてや大きくはストーリーがあるから、俳優自身の”素”に戻ることは許されない。

 女・警官・店員グループは、少年の「イッセー尾形ごっこ」なども含めて”素”から離れている度合いが高い。だからある程度ぶっとんでいた。テンポもまあまあだった。
 夫婦・サトシたちグループも宗教家・信者たちグループも、俳優自身の”素”を引きずりっぱなしでテンション低く、変わり身もギャグも一向に切れ味がよくない。いかにも湿気た演技で、状況設定にとてもついていけず、それぞれのシーンも際立たない。このところの静かな芝居の影響を吹っ切れていないように見えた。

 この舞台は池田商会第5回公演で、きのうときょう3ステージ。若干空席があった。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ