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《2004.9月−11》

状況劇場初期の雰囲気を彷彿
【夢ノ旧作 (上海素麺工場)】

戯作・演出:支那海東
25日(土) 19:15〜21:55 万葉の湯 2500円


 テント芝居の雰囲気ギラギラの、ややグロっぽいけれどド〜ンと決める迫力のある舞台で、何ともおもしろい公演だった。この劇団、俳優が個性的で演技のレベルも高くて見せる。会場選びやその設営についても楽しかった。

 「特許屋」、「黒龍より一場」、「豹(ジャガー)の眼 サイゴンの夜 死笑の停車場一幕打切り」の3つ。
 会場は、大部屋の一角を舞台と客席にしていて、そこまで行くのに黒白の幕を張った長い通路を通る、葬式会場に向かうように。

 「特許屋」は、過去に行くタイムマシンを発明した男のひとり芝居。
 消しゴムつきの鉛筆を頭に乗せ亀の子タワシをぶら下げて、顔のを真ん中から紅白に塗り分けた超肥満の大男がローラースケートで登場。自分の特許についてしゃべりまくる。その迫力はなかなか。「結論は、自分の人生は自分で!」としおらしいところも笑わせる。上演時間10分弱。

 「黒龍より一場」は、浣腸売りにからまれたニナコを黒龍会の内田良平が助けるという、満州での話。
 雨が嫌いというニナコの崩れかかった雰囲気、ベレー帽の浣腸売りの軽さ、内田良平の固さとヤクザっぽさの迫力。それらがぶつかって大げさでテンポのいい展開で楽しませてくれた。約15分。

 「豹(ジャガー)の眼 サイゴンの夜 死笑の停車場一幕打切り」は、満州の中国人黒幕の述懐を支那海東が演じた後、サイゴンから日本に逃げてきた男女の話。全体構成はよくわからなかった。上演時間2時間弱。
 満州の中国人黒幕の話では、支那海東の雰囲気としゃべりが唐十郎に似ていることにびっくりする。セリフは激しくて無駄がなく、黒幕の居た状況と心情が強く印象づけられる。
 サイゴンから日本に逃げてきた男女の話では、男女の情愛の表現がなかなかいい。だから、入国管理官のどぎつさが際立つことになる。よくないのは時に脚本が冗長なこと。頭山満や夢野久作などについての伊藤博文の長いしゃべりは、くどすぎてテンポを阻害して白ける。ガマンするのが少しつらかったが、全体的には楽しめた。

 初期の状況劇場が持っていた勢いを感じさせてくれた公演だった。
 この舞台は、劇衆上海素麺工場の25周年記念公演で、きょうとあすの2ステージ。200人くらいの観客だろうか、満員だった。


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