それらしい思いがあってそれらしい形が舞台の上にあれば、それだけで演劇として成立すると勘違いしている舞台だ。
やっているほうは、それでもおもしろいのかもしれない。しかし、演劇になりきれていないものを見せられる観客はたまらない。
壁で仕切られたそこはゴミ溜めのような街。そこに暮らすステラレとトケイとその仲間たち。
壁の向こうからゴミが投げ入れられ、その中からいくつものピストルと一丁のナイフが。仲間のモクに借金取りにきたイルカを、みんなは殺してしまう。
壁に仕切られた街で、向こう側へ行く穴があるようだという設定。捨て子だったステラレ、母を待つトケイなど、人物の設定。それらはそれなりにいい。なのにこの舞台は、何もはらまず緊張感もなく、ただもううざいだけ。なぜそうなるのか。
一見魅力あるように見える人物だが、彼らには現状を乗り越えようとする意欲などない。だから、解決すべき障壁などあらわれようがない。そんな人物がガチャガチャ動いたところで、興味をそそられることはない。
説明過剰でムダな言葉ばかりのセリフが、それをしゃべるつまらん人物にからみついて、舞台は澱んでしまっている。ストーリーだけ進んでも、実際は何の進展もなく停滞している。その停滞と人物の偏狭さとがあわさってなんとも変な雰囲気の舞台に、いや〜な気分にさせられる。
ラスト近く、ピストルやナイフで人物がドンドン死んでいく。その殺人の根拠はきわめて脆弱で、とても納得できるものではない。舞台を死体で埋めるということをやってみたかったのなら、殺人に至るまでの人物の思いの噴出を納得させるきちんとした人間関係の描きこみが必要だったはずだが、とてもそこまで気が回らない。
舞台はほんのそばなのに、有象無象がはるか遠くで意味のないパフォーマンスをしているように私の眼には映った。
この舞台は、九大演劇部OBを中心に結成された劇団・Village 80%の旗揚げ公演で、きのうときょうで3ステージ。ラストステージを観た。ほぼ満席だった。