「踊りに行くぜ!!」は昨年に次いで2度目だが、ことしのほうがメリハリに欠けるような気がしたのは、だんだん慣れてきたためだろうか。
ベストの作品にするためにも、1作品15分前後という上演時間にこだわらず、もっとフリーにやったほうがいいのではないだろうか。アフタートークも含めて2時間半以上というのは、このような催しとしては長すぎるような気がする。
主催者の主旨説明のあと、次の5組のダンスがあった。
【中山幸子・久冨紀子 ここから続く】
福岡のオーディションで選出されたユニットで、ふたりともダンスの先生。
はじめの手足で形を作る屈伸は、そのとき発する低い声もあって2匹の「蚊」がじゃれあっているというイメージ。それがだんだん大きな動きになってついには舞台を駆け回る。そして再び「蚊」の世界へ。上演時間約20分。
いっぱい詰まっているように見えるが、印象が希薄な舞台だ。流れも身体表現もすっきりしすぎて単調に見えた。上演時間も長すぎるので、短く密度濃くしたがいい。
【宮原一枝 ぬる水】
福岡のオーディションで選出。ダンスグループSelbstの所属。
地べたをのた打ち回るようなゆっくりとした動きから、右手で右足、左手で左足の指をもって歩くカタカタ歩き(演者のことばによる)など。上演時間約20分。
ときに肢体の美しい形を見せるところもあるが、緩急もメリハリも弱くて単調な印象をぬぐいきれない。上演時間も長すぎる。
【身体表現サークル 範ちゃんへ】
広島からの男のペア。ほんとはいつもは3人らしい。
ふたりともフンドシだけ。それも赤と白。このペア、身体を触ったりぶつけたりの、ダンスというより単なるパフォーマンスの趣き。上演時間15分強。
宴会芸をルーツとするというその動きは、ダイナミックでユーモラスである。器械体操のように体がふれあったり、大きな音がするほどにぶつかり合うことをテンポよくトコトン続ける。新鮮でおもしろい。そしてそれが作り出す雰囲気は濃密で、性的な匂いもする。いま注目のこのグループを見ていると、ダンスの楽しさとは何なのか考え込んでしまう。
【安川晶子 ぶれろ】
大阪からの女性ソロ。
大股歩きで登場して、跳ね回ったりのた打ち回ったりのダンス。上演時間20分強。
プロフィールに書かれている「しなやかで饒舌に語る肉体」。それは、同じ動きの繰り返しを単調に感じさせずにひきつけられる、そのことからもよくわかる。
【白井剛 PARADE】
東京からの男性ソロ。発条トの振付家。
バック転から入るが、なめらかでゆっくりした動き、パントマイムのような動き、そして時にエキセントリックな踊り。上演時間約15分。
パントマイムあるいはさらにモノドラマ、それを音楽なしで観ているのはけっこうつらい。その動きがリズミカルで軽やかで、思いの形を身体がみごとに表現していて「いいな」とは思っても、正直「楽しい」気持ちにはなれない。
この5組のステージを観ていてまた、コンテンポラリー・ダンスというのは何なのだろうと考え込んでしまった。(といっても、ダンスの知識などほとんどないからわからないだけで、とっくに答えが出ていることなんだろうけれど)
一生懸命舞台を観ることに集中するのはけっこう大変だが、集中して観客が働きかけるのがコンテンポラリー・ダンスならば、観客もけっこうたいへんだ。このごろ流行の見せるダンスとの違いは何なのだろう。コンテンポラリー・ダンスでは、結局作る側に奉仕するだけの観客なのかと自虐的にもなってしまう。
アフタートークは観客からの質問に出演者が答える形で進められた。40分弱。
このステージは全国14地域で公演されるものの福岡公演で、きょう1ステージ。満席だった。