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《2004.10月−16》

素人っぽさが、気になった
【驢馬王 (天地)】

作:シャラド・ジョシ 演出:プラディプ・ニガム
31日(日) 17:00〜18:55 ぽんプラザホール 招待


 素人っぽさがこの劇団の特徴だが、この舞台に関してはそれが裏目に出てしまった。
 主役の魅力に依存するところが大きいこの作品で、その主役が、王様の愛すべきキャラもその後ろの残忍さも表現できない演技の幅の狭さが致命的だ。そのことは、客席から一度も笑い声が起こらなかったことからもわかる。

 国民の人気ばかりを気にして、ことあるごとにアピールしようとする国王。
 洗濯屋の荷担ぎロバが死んだ。そのことが人が死んだと間違って国王の耳に入り、国王は人気取りのために盛大な葬儀を行おうとする。

 2時間弱のこの舞台で、荷担ぎロバのアラダート・カーンが死んだと国王の耳に入るまでに1時間弱もかかるというひどさだ。その間、演劇人へのパトロンの話などのつまらん話ばかりで白ける。
 そんなつまらん話でも、キャラで見せられるレベルの俳優ならばそこまで何とかもつかもしれないが、俳優がとてもそんなレベルではない。本筋に関係のない同じようなおもしろくもないシーンが延々と続きもうイライラ、その進展のなさにとても起きてはおられない。

 盛大な葬儀の準備が整ったはいいが、死んだのがロバだと国王が知ったのは終演まで30分を切ってからだし、ロバと同じ名のアラダート・カーンという人間がいることを国王が知ったときは終演まで10分を切っているというひどさだ。
 そのラスト近くの短い時間にそそくさと交わされる国王とアラダート・カーンの肝心の会話のなんという粗雑さ。国王のために死ぬことをアラダート・カーンがそんなに簡単に承諾するはずもあるまい。そんな大事なところをすっ飛ばしていて、あまりにいびつ過ぎる。

 集団のシーンでじっくりとした雰囲気を出すこの劇団だが、この舞台では国王中心のためかそれも弱く、魅力のない舞台だった。
 それにしてもこの劇団、このところの公演では退歩しているように見えるのが気になる。すっかり定着してしまった開き直ったような素人っぽさ、そこからの脱却が必要なのではないだろうか。

 この舞台はきのうときょうで4ステージ。若干空席があった。
 「そこ私の席です」という人がきて、2回も座席を移動させられた。入場時に座席指定とは言われていないし、どうなっていたんだろう。


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