のっけから「がなり」の応酬で、形の上ではハイテンションなのだが、一向に引きつけられない。
台本も演出も演技もやたら力が入りすぎているだけで、荒っぽくて、情感には乏しい舞台だった。
女子高生・あゆみに届いた、死んだはずの母からの手紙が言うとおりに、学校裏の時計台に行くと、10時間前の世界に戻ってしまった。時間がループしていることを知ってしまったあゆみ。
そのあゆみと、10年前の火事のときに生死を分け、別の時間を生きるカノンがいた。
1時間強の短い芝居なのに、開幕でキュッと観客を引きつけることはしない。ガチャガチャと、ひたすらしつこく展開するだけだ。
観客にちゃんと伝えようという思いが希薄だ。ループする時間がなぜ問題なのかよくわからないし、別の時間への入り口とキーとしての懐中時計というような理解のためのキーワードもサラリと流す。なのにいかにも意味ありげに、舞台は勝手に盛り上がる。私は取り残されることになるが、無理についていこうとも思わない。
一本調子の「がなり」がどれほど感興を削いでいるか。
シュプレッヒコール劇だってもっとメリハリをつける。緩急も強弱もない「がなり」はイライラを募らせるだけで、人物の思いはガラガラ声のなかに発散してしまい、リリシズムのかけらもないという舞台になってしまい逆効果だ。普通にしゃべって何が問題なのだろう。勘違いしているとしか思えない。
この舞台は12日から14日まで5ステージ。4ステージ目を観た。若干空席があった。