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《2004.11月−3》

芝居小屋気分は、もう楽しい〜っ
【南国から来た寒いヤツ (ギンギラ太陽’s )】

作・演出:大塚ムネト
14日(日) 18:30〜21:20 嘉穂劇場 3500円


 公演形態は大掛かりで、内容もたっぷりで、九州の演劇界にとってエポックメーキングな公演だ。復興なった嘉穂劇場という芝居小屋気分・お祭り気分もあって、その場に立ち会っていることさえがうれしく、楽しさも倍増された。

 ひよ子侍の妹・雛姫が悪者に拉致された。犯人は、ひよ子侍が助けたドライアイス娘・しぐれを拉致しようとした悪者といっしょのようだ。そこで、ひよ子侍は悪者を追ってチロル十兵衛などとともに鹿児島へ。
 鹿児島の南国白熊城はお菓子業界の席捲を狙う悪者の手の内にあり、そこでは悪者たちによって粗悪菓子製造機が完成しようとしていた。

 実質上演時間2時間30分という長い舞台だが、しつこいくらいいっぱいの思いと工夫があふれていて飽きさせない。伝聞でストーリーを進めず、実際の場面として上演されるというのもいい。
 劇場の規模が大きくなったが、それに見合ったスケールを持ち、熱とパワーを持った舞台だった。挑戦して力を出し尽くした舞台に、ギンギラ太陽’s が一回りも二回りも大きくなったように見えた。

 テーマは家族愛。それがとことんべっとりと甘く語られる。
 ひよ子侍と妹・雛姫、ドライアイスのしぐれと兄・こがらしの兄妹愛。チロル軍団、H2ロケットの兄弟愛。そのほか親子の愛などいっぱいあるが、極めつけは白熊城主の金時・銀時の夫婦。溶けているところで合体してしまった。両性具有のこの役を演じられるのはとまとママをおいてないだろう。はまっていた。

 そのようなべっとりとアクションとをうまく取り混ぜる。
 たっぷりのチャンバラが単独でも十分楽しめるレベルだ。多人数で幾組みもがの同時にやる立ち回りはうまくシンクロしていてみごとで、太鼓を使った効果音もいい。
 花道以外にも2本の通路を俳優たちは走り回り、劇場を目いっぱい使う。2000以上の目が見つめていることが俳優の力になっているように見えた。

 チャンバラ以外にも、時代劇映画からと思えるアイディアがいたるところにちりばめられているのも楽しい。
 ひよ子侍のニセモノが現われる、悪人が白熊老人になりすます、隠し砦がある、気がふれたやさしい女性がいる、そして表切り(悪から正義へ)などなど。
 悪人以外も切られて死んでいく。ちゃんとしたチャンバラの結果で納得だが、粗悪菓子製造機で悪の手先と変えられる菓子とともに、そのようなかわいそうさも時代劇映画の要素だったなと思い当たる。

 劇場機構の使いこなしも含めて、テクニカル面もいい。
 冒頭の落城のシーンから、よく練られた装置に照明・音響がみごとに連動して、舞台の広さを感じさせない。回り舞台などの劇場機構はそれが動くだけでびっくり感動もので、新鮮な効果がある。

 客演の俳優が実力を発揮している。
 表切りを思い入れたっぷりに演じる次賀慎一朗。悪役の迫力たっぷりの瀬口寛之。ふたりとも大きく見えた。やっぱり悪役にうまくはまって魅力的な不破一夜。旅籠の女将などの北川宏美もうまくはまって、存在感たっぷりだった。

 この舞台はきのうときょうで3ステージ。ラストステージを観た。満席だった。
 休憩時間に劇場のかたとお話したら、きのうは福岡行きのバスに積み残しが出た、こんなことは初めてだということだった。


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