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《2004.11月−4》

わかりやすさ=おもしろさ、ではないからむずかしい
【冒険活劇 ひとさらい (小耳プロジェクト)】

作・演出:下松勝人
20日(土) 15:10〜16:45 福岡市立青年センター3階会議室 招待


 広くない会議室で、装置も照明も音響も十分ではないというところで、いちおう冒険活劇という形にはなっていた。スペクタクルというのは、舞台の物量の問題ではなくて、ドラマの展開の大きさだというのはわかる。
 ただテンポ重視のためか、ややおおまんでサラリとしていて、下松作品らしいしつこさと突っ込みが弱いのが不満だ。

 さらわれた姉を探して、中国から密航して福岡にたどりついた弟。
 その姉は、戦時中に生体解剖をした医者を首領とする一派によって過去の記憶を消され、一派に奉仕させられていた。
 組織の潜入した弟は、日本人の女性記者と協力して姉を救出しようとするが捕まってしまう。

 下松作品にしては珍しく、グロ度が弱くてかなり楽しくてテンポよくて、わかりやすい舞台だ。今回はそれをめざしたのだろうか、何も考えないで観るのには楽しめる。
 なぜ生体解剖の医者と軍人が現在までも生きているのかとか、女性記者の生体解剖前になぜ白雪姫のコスプレをやるのかなどのアレッ?と思ったところは、すべて納得いくように説明される。そのわかりやすさが却って、作品の深みとか魅力を弱めて単調で勢いが弱いように見せてしまうからむずかしい。

 コスプレによって少し多彩にはなったが、それでも構成としてはまだ単純すぎるし、ユーモアに流れて激しさ・おぞましさが影をひそめてしまった。
 姉は弟の口ずさむ故郷の歌で簡単に記憶を取り戻し、悪人退治もあっという間で、肝心の転換点の描写が弱すぎる。下松作品らしくない淡白さだ。
 この話が、秦の始皇帝の命を受けて不老不死の妙薬を蓬莱国に探しにきた徐福の話にヒントを得ているのならば、そこは徐福を登場させるなど、時空を超えてスケールアップしてもよかった。

 この舞台はきょう2ステージ。1ステージ目を観た。満席だった。


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