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《2005.6月−8》

三島由紀夫の、不可思議なセリフ
【黒蜥蜴 (パルコ)】

原作:江戸川乱歩 脚本:三島由紀夫 演出:美輪明宏
15日(水) 18:40〜22:25 福岡サンパレス 6300円


 長い上演時間を満たすボリュームに圧倒される舞台だ。
 かなり古臭いと見えるスタイルだが、力わざでグイグイと突き進んでいく展開が楽しめる。美輪明宏の、ちゃんと上演することでおもしろくようというこだわりから、ボリュームたっぷりになり、ひきつけられる舞台になった。

 宝石商の娘を誘拐してエジプトの星という巨大ダイヤを奪い取ろうとする女怪盗。黒蜥蜴。
 対する明智小五郎との知力の限りを尽くした闘いのなかで、互いにその魅力にひきつけられていく。

 実質上演時間が3時間を超える3幕が、きっちりとオーソドックスに幕割りされ、さらに各場もきっちりとした装置でていねいに作り上げられている。東京タワー展望台から波止場へ、大掛かりな装置はそれだけで感動ものだ。
 それぞれの幕で起承転結があり、それぞれの幕がひとつの作品と言える歌舞伎のような作りで、幕が進むと話はさらに大きくからまって展開していく。
 第一幕では、誘拐された娘をすぐに助け出して明智の勝ち。それが第二幕では、娘はさらわれ身代金も取られる。第三幕では、娘を助けに行った明智も殺されてしまうが・・。
 黒蜥蜴と明智の恋と対照的な、娘(実は替え玉)と黒蜥蜴の手下との恋もからむ。

 現代の舞台からみれば、セリフは説明調でくどく、テンポが悪いと見える。だが、少しは退屈だが飽きることはなく、どっちかというと気持ちいいのだ。それはなぜか? 第三幕まできてようやく気がついた。
 長い心情吐露では、その言葉の魅力もさることながら、そのなかにドラマがあるからだ。独白が、その人の内面を掘り下げて状況さえも変える。それが次の大きな展開を準備する。そのような力をセリフが内蔵している。
 それにしても、3階席だから細かいところが伝わらないのがつらい。パルコ劇場の舞台を2000人をはるかに超えるキャパのサンパレスで上演することがドダイ無理がある。

 この舞台はきのうときょうで2ステージ。少し空席があった。


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