始まったら止められない結婚披露パーティ。その会場の調光室に来る人々の思いを、止められない時間のなかにギュッと凝縮して表現する。
パーティの進行と調光室での動きがみごとにシンクロして、緊張感たっぷりの楽しい舞台だった。
ホテルのパーティ会場の調光室。目の下で行われている結婚披露パーティの主役は60歳過ぎのカップル。
調光室のオペレーター、新郎の娘と新婦の娘、新郎新婦の共通の友人である女性、新人司会者の様子を見に来たベテラン司会者、パティシエ、そしてホテルのマネージャーの8人の女性が入れ混じる。
新婦の娘が、新郎新婦こだわりのウェディングケーキにこぶしで穴をあけてしまった。それはなぜ? そして、ケーキの修復はケーキカットに間に合うのか?
「ショー マスト ゴー オン!」だ。
娘たちがパーティに出ないのは、親子関係の確執からだろう。共通の友人を披露パーティによばないということは、老境の恋にも三角関係があったからだろう。さらに、心無いうわさや、財産問題もあるだろう。
それぞれの人物が抱えたそのような諸々の問題が立ち表れてきて、からみもつれる。さらには娘どうしの口争いまで進むというヌキサシならない状況まで至るが、むしろ本音が表れたことで次第に解きほぐされていく。それも、中断できない結婚披露パーティの進行にからんでという緊張感がいい。それをくどくなく描いている脚本のレベルは高い。
舞台には、脚本と演出を別の人がやっているという効果が出ている。
三浦としまるの脚本を後藤香が演出することによって、その特徴が強調されておもしろさは増した。ちょっとしたしぐさに心の機微を感じさせる演出はみごとだ。初々しくて笑いをさそうやりとりの、絶妙のタイミングはみごとだ。
そのようにうまくまとまっているのに、ラスト「人生はおもしろい」と言ってしまうのは、まとまりすぎてしまいモッタイナイ。
この舞台はきょうからあさってまで3日間5ステージ。満席で、当日券で入ったら立ち見だった。