軽やかで楽しさいっぱいの舞台だ。
落語のなかの女の場をお染というひとりの女郎でつないで、ロードムービー的な展開。深刻にならずにテンポよく、歌もまじえて心地よく、木の実ナナの幅広いところをキッチリと見せる。いくつもの役を小気味よく演じ分ける男優たちもいい。
品川の、やや年増の女郎・お染。
男とだましたりだまされたりで、新宿、吉原へ、浮いたり沈んだりしながら流れ流れて、そしてついには魚屋の女房になる。
ものすごくテンポいい。
典型的な状況をサッと作り、出し惜しみせずにドッと見せては、サッサと次の状況へと転換していく。例えば、幕開きの「品川心中」のくだりは、歌も含めて10分でやってしまうという手際のよさ。全編がそんななのだ。
だからといってそれぞれの話が手軽かというとそうではなくて、そのおもしろさはキッチリと押さえている。歌謡曲やポピュラーナンバーをアレンジして歌詞をつけた歌もみごとで、つい聞きほれる。
ラストは「芝浜」でしっとりとしめるというのも、娯楽劇だからという心配りが効いている。
陰山泰、植本潤、内田滋の3人の俳優の取り合わせが絶妙だ。
陰山泰は、渋い、存在感のある人物をやらせたら抜群。植本潤は女形もやれる強みで、若い女郎、お大尽、ケコロ女郎など幅広い役でフル回転。内田滋は若旦那のようなやや気弱な役がみごとにはまる。
4人の出演者とは思えない役の幅広さだ。
この舞台は小郡ではきょう1ステージ。観客は大部分が中高年。後ろのほうに若干空席があった。