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《2005.7月−11》

魅力的な、鐘下氏の話
【鐘下辰男氏を囲んでの夕べ (子ども文化コミュニティ)】

構成:子ども文化コミュニティ
21日(木) 19:05〜20:35 アクロス福岡・円形ホール プレゼントチケット


 8月に上演される劇団うりんこ公演「弟の戦争」のプレイベントとして、その脚本・演出を手がけられた、演劇企画集団 THE・ガジラを主宰の鐘下辰男氏のトークイベントが開催された。
 第1部が、高崎大志さんとの一般的なトークで50分。第2部が「弟の戦争」について、鐘下氏、劇団うりんこの女優・青山知代佳さん、子ども文化コミュニティの高宮由美子さんのトークで30分。
 トークがとてもおもしろかったので、その内容を書いておきたい(文責は薙野)。

〔第1部 演劇を語る〕

  〔内容、非公開です。興味のあられる方は、子ども文化コミュニティにお問合せください。〕

〔第2部 「弟の戦争」をテーマに語る〕

○脚色・演出の依頼があったとき感じたことは?
 原作が、戦争を違った切口から描いていたのが新鮮だった。思っていたものと近いところがあった。
 日本の場合、ヒロシマ、オキナワのように、戦争の悲惨さ、悪であるという語られかたをしてきたが、現代にあって日本が加担している戦争が存在しているなかで、悲惨さだけを引っぱりだして戦争を語っていくというのが、ある種の片手落ちではないかと感じていた。それがほんとうに戦争すべてを語っているのか、と。今の日本人に必要なものは何かと考えていたときに、この作品の視点は必要なものだと思った。
 弟がイラクの少年兵と同化していく話―イギリスの普通の家庭で起こる。平和といわれる家庭に突然兵士が現れるのがおもしろいところだ。
 戦争を映像でしか知ることができない―それで知った気分になっている。映像で情報として見るのではなくて、現場の状況と人間の狂いかたを知ったほうがいいので、この作品はいい題材だった。
 悪い人が戦争を起こすと考えるのが危険で、戦地に行ったら殺してしまうかもしれない―それが恐ろしいところだ。
○「児童演劇なんて」ということをどう考えるか?普通の演劇との区別は?
 「なんて」とは何?このごろ学校廻りの劇団は見ていないが、自分はいちばん苦労している人(子ども)を相手にしていると思っている。大人のウソはすぐにばれる。子どものほうが利口で、子どもにウソは通じない。だから、役でやるのではなくて人間でやってくれ!お芝居にするのではなくて生の言葉にしていかないとまずいぞ!すぐに見透かされるぞ!と。そこに気をつけた。
 もうひとつが、ひとつのテーマを強制しないこと。若い人はいろんな面を見ているので、高らかにテーマを謳うのではなくて、いろんな面から見られるものにした。ステレオタイプな演劇に陥らないように作った。

〔質疑〕
○影響を受けた脚本家は?
 ない。個人的にはないが、すごいなと思ったのは、留学中ウェストエンドで観た芝居に、まったく違った雰囲気の芝居がたくさんあって、こういうことやってもいいんだ、気にしなくてもいいんだ、というのはあった。
○エンターテインメントに向かうことは?
 ない。現実の生活が楽しすぎて、エンターテインメントをやる必要がない。


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