ことしの談志の独演会は、「がまのあぶら」と「つるつる」。
声がかれて調子悪そうだった。それでも談志の骨太さと幅広さ、切れ味のよさを感じることができた。
開演して20分くらいは、漫談と小噺。出てきてすぐ、ひっくり返ってみせるし、漫談はややヒステリックで自虐的。小噺はおもしろいが単発的で、素の部分が入りこんだりして、話が波に乗れない。このところしょっちゅうな話しているわけではないから、トレーニングが必要だと言い訳がある。
そのあと「がまのあぶら」を約20分。
本来の形の口上を朗々と聞かせたあと、酔っぱらって失敗するパターンで繰り返す。さらに、あやしげな英語でやって、メタメタの韓国語でまでやる。
はじめの口上は、腹に響く肉太の声でメリハリがありテンポもよくて迫力だ。説経節が落語のルーツだというのがわかる発声で、講談に近い。
酔っぱらったときの口上は、いかにも落語というしゃべり。その軽さが楽しいが、小さな動きのていねいな描写がみごとで、目の前に蝦蟇の油売りがいると錯覚するほどの演技力にびっくりする。
仲入り後、「つるつる」を約40分。
売れっ子の芸者・お梅に思いを寄せる幇間・一八。そのお梅から女房になってもいいから、夜2時に5分と遅れずに部屋に来てほしいと言われた一八。客にわけを話して12時に帰してもらったはいいが、眠りこけてしまい、気がつけば昼の2時。
これ以上はないというウキウキが奈落へ。そのどうしようもなさが伝わってくる。
談志の芸は、生々しくて激しい。
大声、大仰な身振りで、グイと掴んだ人物の個性がドッと顕われる。急転直下が不自然にならない切れのよさ。
落語というとチャラチャラした話芸だという印象があるが、談志の話芸は、一本大きな芯がとおっている。しかもそのしゃべりは多彩で幅広い。
調子のいいときの怒涛のような談志を聞きたいが、もう年齢的に無理なのだろうか。
この独演会はきょう1ステージ。観客の年齢層は幅広い。満員だった。