土田英生の職人芸ともいうべき舞台づくりが楽しめる公演だ。
そのきっちりとまとまりすぎたところなど、少しアキが来たかなと思っていたら、演出が変わったり出演者が変わったりすれば、新鮮に見られる。
この舞台がvol.1である「土田英生セレクション」は、MONO以外の出演者で上演することで、さらに作品の魅力を引き出そうとする試みだと思う。
それはいちおう成功していて、楽しめる舞台になっていた。
過疎化が進む小さな島に建つ「ハイツ結城」は、ゲイ専門のアパートで、それを建てた結城の娘・小百合がいまの管理人。
4人の住人はゲイで、訪ねて来るのはかっての住人・吉村と、牛乳販売店の中年女性・毛利くらい。その毛利に、若くてイケメンの住人・久野が恋をしてしまった。
ゲイとゲイでない人のあいだを揺れ動く心理を、うまく活写している。
島にあるゲイ専門のアパートという、隔絶された中でのさらに隔絶された異様と見られかねない世界は、島の人たちから差別され嫌がらせの対象にされる。
アパートでは、厳格にゲイの世界を守ろうとする男と、少し違った方向にも興味のある男たちとのあいだにギャップがある。
そして、若いゲイが女性を好きになったことで連帯感にひびが入り、共同体が崩壊していく。その様を、それぞれの人の思いをていねいに追って描いていく。
登場人物はそれぞれに個性的で、それぞれの思いが向かう相手とのピンと張りつめたような人間関係をスッキリと描きあげる技術には、安心感がある。
それぞれの思いが露呈していくところをドラマとして見せるやり方がうまいが、それは手馴れていて、職人技といっていい。
絶妙な人物配置の上に、クセなどのちょっとした仕掛けでそれぞれの人物の個性を実にうまく強調する。わざとらしく感じさせることなくそれをやってしまう。
ラスト近く、結城の受け売りでゲイ哲学を説く笹川にさりげなく求婚する小百合。自分のことばに縛られてそれを受けられない笹川。ほろ苦い思いが残る。
田中美里、今井朋彦、片桐仁、千葉雅子などの俳優の演技は見ていて飽きないし、脚本のおもしろさをさらに引き出していた。
この舞台は、大野城では1ステージ。かなり空席があった。