観世流梅若会一門の鷹尾兄弟の会である「鷹の会」の定期公演。
年2回の公演のうち8月は入門編だということだが、それでも半能1曲では物足りない。解説を短くしても、半能でいいからもう1曲上演すべきだ。
開始後、解説が40分あるが、これが長すぎる。内容的には悪くないが、引っ張りすぎていてムリに40分つぶしている感じすらあった。
手を上げてもらったら、初めてお能を観る人は全体の1割ほど。だったら、解説をポイントに絞り込んで、もっと簡潔にやってもいい。
仕舞は、「半蔀クセ」と「須磨源氏」で、上演時間は計13分。
「半蔀クセ」(鷹尾章弘)は、柔らかくスムーズな動きの優雅な舞だ。
「須磨源氏」(鷹尾祥史)は、一歩突っ込んだダイナミックな動きがいい舞台だ。
「融 舞返之伝」(シテ:鷹尾維教 ワキ;苗坂融)は、中入後の舞い中心の動きの大きなところの上演で、上演時間40分。
囃子だけの演奏の場面がけっこう長くあったりするが、メインは五段形式の舞+急の舞三段で、途中に「クツロギ」と舞を休むという演出もある。
自分が習っていることもあって、つい大鼓に目が行ってしまうが、大鼓を習っているおかげで、能を少しは楽しめるようになった。きょうの囃子は、どこかうまく共鳴していないように聞こえた。
鷹尾維教の舞はダイナミックで、五段の舞と早舞の切替もよくて楽しめた。繊細さを内包したダイナミックさになれば、もっと多彩で味わい深いものになろう。
途中シテの烏帽子が額から目のところに落ちてきてしまって、後見の鷹尾章弘が直すところがあった。
アフタートークで鷹尾維教は烏帽子が頭からずれてきたことを、「後見の役目を意識させるためにわざとやった」と解説された。冗談だとは思うが、ベストを観客に見せる立場としては、やってはならないことではないのか。
ろうそく能なんで、ろうそくへの点火は正装の人がやってほしかった。
この舞台は、鷹の会の第20回公演。前回が鷹の会設立10周年記念公演だったようだ。5年位前からときどき観ているが、力みが取れて自然な感じになってきたのは好もしい。
客の入りは半分ほどで、空席が目立ったが、内容からみてやむをえないだろう。費用の問題もあろうが、入門編であっても手加減せずに、ちゃんとした量と質の舞台を見せてほしい。