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《2010.8月−1》

ちゃんとしたボリュームがほしい
【ろうそく能 光源氏の世界 (鷹の会)】

構成:鷹尾維教、鷹尾章弘
4日(水) 19:00〜21:05 大濠公園能楽堂 3500円(割引チケット)


 観世流梅若会一門の鷹尾兄弟の会である「鷹の会」の定期公演。
 年2回の公演のうち8月は入門編だということだが、それでも半能1曲では物足りない。解説を短くしても、半能でいいからもう1曲上演すべきだ。

 開始後、解説が40分あるが、これが長すぎる。内容的には悪くないが、引っ張りすぎていてムリに40分つぶしている感じすらあった。
 手を上げてもらったら、初めてお能を観る人は全体の1割ほど。だったら、解説をポイントに絞り込んで、もっと簡潔にやってもいい。

 仕舞は、「半蔀クセ」と「須磨源氏」で、上演時間は計13分。
 「半蔀クセ」(鷹尾章弘)は、柔らかくスムーズな動きの優雅な舞だ。
 「須磨源氏」(鷹尾祥史)は、一歩突っ込んだダイナミックな動きがいい舞台だ。

 「融 舞返之伝」(シテ:鷹尾維教 ワキ;苗坂融)は、中入後の舞い中心の動きの大きなところの上演で、上演時間40分。
 囃子だけの演奏の場面がけっこう長くあったりするが、メインは五段形式の舞+急の舞三段で、途中に「クツロギ」と舞を休むという演出もある。
 自分が習っていることもあって、つい大鼓に目が行ってしまうが、大鼓を習っているおかげで、能を少しは楽しめるようになった。きょうの囃子は、どこかうまく共鳴していないように聞こえた。
 鷹尾維教の舞はダイナミックで、五段の舞と早舞の切替もよくて楽しめた。繊細さを内包したダイナミックさになれば、もっと多彩で味わい深いものになろう。

 途中シテの烏帽子が額から目のところに落ちてきてしまって、後見の鷹尾章弘が直すところがあった。
 アフタートークで鷹尾維教は烏帽子が頭からずれてきたことを、「後見の役目を意識させるためにわざとやった」と解説された。冗談だとは思うが、ベストを観客に見せる立場としては、やってはならないことではないのか。
 ろうそく能なんで、ろうそくへの点火は正装の人がやってほしかった。

 この舞台は、鷹の会の第20回公演。前回が鷹の会設立10周年記念公演だったようだ。5年位前からときどき観ているが、力みが取れて自然な感じになってきたのは好もしい。
 客の入りは半分ほどで、空席が目立ったが、内容からみてやむをえないだろう。費用の問題もあろうが、入門編であっても手加減せずに、ちゃんとした量と質の舞台を見せてほしい。


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