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《2010.8月−3》

大鼓の初舞台で、大緊張
【「ゆかた会」〔出演〕 (春風会)】

構成:白坂保行
7日(土) 13:30〜17:30 観山荘 観覧無料


 春風会は、高安流大鼓の白坂保行さんの指導を受けている人の会で、「ゆかた会」は、その年1回の発表会。気軽にゆかたで、ということで「ゆかた会」と名づけられている。
 今回の発表者は、わたしも入れて11名。わたしのように大鼓だけを習っているのはそれほど多くなくて、お謡いや太鼓や笛をやられていてさらに大鼓もやられているという人が多い。なかにはプロ(職分)の人が数人おられる。

 大鼓の稽古を始めて1年4ヶ月のわたしは尻込みしたが、「発表会に出ないとうまくならない」と言われて出演を決めた。いちばんの新参者なので、発表がトップバッターになった。
 演目は「熊野 ロンギ」で、8分以上かかる。稽古本「高安流太鼓 序ノ巻」の手附け順番では8番目にあたり、それまでに比べて長くて急に難しくなった。もっと短いのを希望したが、許されなかった。
 発表会前々日の5日が最終の稽古日で、先生の謡に合わせて指示されたとおり一応はできたが、それまでが大変だった。「長くて憶えられない。これまでのようにルールが見えない」というと先生、地謡が謡うところとシテが謡うところを蛍光ペンで色分けしてくれた。それで何とか憶えた。
 それでも、なにしろ人前で打つのは初めてのことで、緊張で真っ白になるに決まっている。とにかく身体が憶えるまでと稽古を繰り返したつもりだったが・・・。

 発表会だが、いっしょに謡や囃子をしていただく方はプロの方たち。謡が観世流の鷹尾維教・章弘さんご兄弟、笛が森田流の森田徳和さん、小鼓が幸流の幸正佳さん。
 舞台に上がると、気持ちが落ち着く暇もなく謡が始まった。最初の「打出」で打てず、次から何とかついていった。
 途中2、3ヶ所間違えたと思う。そして後半、手を見失った。気持ちが焦っているから、前のめりに飛ばしてしまうのだ。先生の誘導で何とか戻って、かろうじて打ち終えた。
 当たり前だが、稽古のときとは全然違う。まわりに音がドーッと立ち上がってくる感じで、とても意識して聴くような余裕はない。ただ、ほかの音が消えたところにポンと打つのは、うまくいったら気持ちいい。
 終わって先生方にあいさつ。白坂先生からは「初舞台だから」と言っていただいた。とにかく終わってほっとした。

 わたしのあとは、次のように続いた。20分くらいが多く、長いものは30分近い。
 ティムさん「鶴亀 キリ」。小鼓を幸流家元の幸正悟さんが突然正佳さんに代わって打っていただいた。
 真子さん「羽衣」。稽古でよくいっしょになる方で、笛はベテランらしい。いつもよりずいぶん緊張されていた。
 和子さん「松風 キリ」。お謡いをされている徳山の方で、端正に打たれる。
 みどりさん「竹生島」。テンポが速い上に長いので大変で、白坂先生が舞台上でうしろにつかれた。この稽古のとき2回ほど後ろから聴いたことがあるが、すごい迫力にびっくりしたが、それが舞台では普通に聞こえてしまう。笛が白坂先生の奥さんの未来静さん。
 健輔さん「田村」。九大の能楽部の出身で、謡もされる。正確にきちんと打たれる。わたしにはわからなかったが、途中間違えられたらしい、先生からからかわれていた。
 悦子さん「羽衣 彩色」。80歳の太鼓の先生。気迫に満ちている。ご自分で作られた手附けを見せてもらったら、小鼓、笛までの手がびっしりと書き込んであった。9月にはこれを東京でも打たれる。
 雅子さん「百万」。この方は宝生流の職分で、大鼓は3年ほどだということだった。謡がわかるからすぐに打てるということではないから難しい、ということだった。
 健作さん「三輪」。わたしと同年輩で、入門6年のベテラン。30分近い長い曲をていねいに打たれる。いつになったらそのように打てるようになるのかと、聴いていて暗澹たる気持ちになってくる。
 未来静さん「祇王」。未来静さんとは、白坂先生の奥さん・久貫弘能さん(宝生流シテ方)の別名。ていねいに打たれた。
 こずえさん「海士」。稽古でいっしょになるときはいつもおしとやかでにこやかだが、舞台ではきりっと締まって別人のよう。長い曲をきっちりと決められた。

 あと、番外一調「小歌」を白坂先生が。謡は久貫弘能さん。音の力強さが全然違う。そのことにびっくりした。

 終わったあと懇親会で、参加者はむろん謡や笛の先生方とも、たっぷりと話ができた。疲れたが、充実した一日だった。


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