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《2010.8月−5》

よけいなこと、整理しちゃってよ
【大河の一雫 (演劇銭団Doーリンク場)】

脚本・演出:小林ゆう
14日(土) 14:10〜16:05 大野城まどかぴあ 小ホール 1500円


 言い出せばいっぱいあるけど、とにかく精一杯取り組んで、骨太を目指した時代劇をこれでもかと、しつこく上演した熱意が伝わってきた。
 全体に書き込みすぎていてくどい。そのあたりが改善されれば、舞台の質は大幅に向上するだろう。

 次の藩主と目される藩主の息子忠清の側室・しなのは、忠清になじまずに、側室・ふじに水をあけられ、時に夜の相手を無理強いされたりする。
 それは、幼いころからの親しんだ辰彦への思いからで、そのことが次第に意識されてくるようになる。辰彦はいまや藩主の懐刀。そして藩主は、清忠を後継者には指名しなかった。

 男たちの権力争いに翻弄されながらも、自分を失わず自分を貫き通した女性と、その人が思う男性との純愛物語。
 よけいなことを受け流してこの点だけに絞って舞台を観れば、くさい芝居が若干あるにしろ、いちおう見られるドラマにはなっている。
 しかしなにせ、よけいなことをやりすぎたり言いすぎたり、矛盾やピントずれがあったりと、わざわざメインの部分の印象を弱めてしまっていた。もったいない。

 「藩」という言葉が出てくるので江戸時代のことかと思いきや、下克上があるからどうやら戦国時代らしい。
 まだ藩主(本来なら城主か)になっていないのに側室が何人もいて正室がいない、なんてのも理解に苦しむ。いやがる女性を無理やり側室にして手篭めにするとか、側室が正室に昇格するとか、あり? 戦国時代だったら政略結婚でしょ。
 息子が藩主から後継者に指名されないのだが、だったら誰が指名されたのかわからないし、話に出てくるように藩主の懐刀の辰彦が後継者になるなどあるはずがない。
 クーデターを決意した忠清が、側近の景蔵になぜ冷たく当たるのか。それでも景蔵は何の疑問も感じずに忠清についていくのはなぜか。
 しなのは辰彦を思い続けているのだが、なんで景蔵にもちょっかいを出すのか。などなど、違和感ゴロゴロだった。
 つまらないエピソードを入れ込んで、肝心のところが見えにくくなっている。権力争いと恋愛がうまくからみながら並行していくべきところを、どっちかに偏ったりでいびつなものになっていた。

 セリフをゴチャゴチャと書き込みすぎている。
 変な警句を多用したよけいな一般論抽象論をつけたして、長々としゃべる心情吐露ばかりで、それを延々とやっている。こっちの気持ちのほうが先に行ってしまって、さっさと来いよ、という感じだった。
 セリフは1/3に削れるし、そうしないとまともな脚本にはならない。

 この舞台は、12日から14日まで4ステージ。若干空席があった。


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