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《2010.8月−11》

楽しい、いかにも祝祭劇
【夏の夜の夢 (FPAP)】

原作:W.シェイクスピア(翻訳:坪内逍遥) 翻案:川口大樹 演出:後藤香
28日(土) 14:00〜15:50 ぽんプラザホール 1500円


 うまくポイントを押さえた脚本と演出に、要所にぜいたくな俳優を配して、いかにも祝祭劇という楽しめる舞台になっていた。

 脚本は、話のテンポを重視しながら、おもしろさを削がないようにうまく潤色している。
 骨格となる部分を押さえたうえで、冗長な部分をうまく整理していて、スリムになったがパワーは落ちていない。きちんとしたセリフで、わかりやすい。

 演出は、非常にオーソドックスに取り組んで、おもしろさを引き出していた。
 それぞれの場面がくっきりとしていて、それをテンポよく繋げていく。それぞれの場面では、観客の心をひきつけるようなアイディアをさりげなく埋めている。
 熟達していて、サービス精神にあふれた演出だ。

 キャストは実にぜいたく。
 そのなかでも、杉山英美、浜崎留衣、彰田新平と磐石な妖精組が圧倒的におもしろかった。
 パックの杉山英美は、自然にコミカルさを出していて、この人の幅広さがよくわかる楽しいパックだった。
 妖精の王・オーベロンの妻タイターニアの浜崎留衣は、怪演ともいうべき力技でこの人らしさ全開。圧倒的な存在感を見せつけた。
 対するオーベロンの彰田新平は、そんな浜崎留衣の演技をみごとに受け止めた。

 貴族組は、主役のふたりがノーブルさに欠け、ヘレナの原岡梨絵子を除けばみな単調な演技で、いまひとつ精彩を欠いていた。
 職人組は、全体的なパワー不足のなか、ボトムの笹本順子ひとりが奮闘。職人それぞれの個性を際立たせて絡ませて、特に劇中劇ではもっと猥雑なパワーを噴出させてほしかった。そのためには演出上の工夫も要るだろう。
 貴族組、職人組がちゃんとパワーアップしていて拮抗していれば、おもしろさはさらに際立ったはずだ。

 照明が心地よくこの舞台を盛り上げ、節度を守りながら決めるところは決める音楽もよかった。

 そんなふうに楽しめた公演ではあったが、斬新さには少しばかり欠けていて、やや古臭いという印象は残った。

 この舞台は、ぽんプラザホール10周年記念 福岡・九州演劇祭の企画の公演で、27日から9月1日まで8ステージ。満席だった。


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