うまくポイントを押さえた脚本と演出に、要所にぜいたくな俳優を配して、いかにも祝祭劇という楽しめる舞台になっていた。
脚本は、話のテンポを重視しながら、おもしろさを削がないようにうまく潤色している。
骨格となる部分を押さえたうえで、冗長な部分をうまく整理していて、スリムになったがパワーは落ちていない。きちんとしたセリフで、わかりやすい。
演出は、非常にオーソドックスに取り組んで、おもしろさを引き出していた。
それぞれの場面がくっきりとしていて、それをテンポよく繋げていく。それぞれの場面では、観客の心をひきつけるようなアイディアをさりげなく埋めている。
熟達していて、サービス精神にあふれた演出だ。
キャストは実にぜいたく。
そのなかでも、杉山英美、浜崎留衣、彰田新平と磐石な妖精組が圧倒的におもしろかった。
パックの杉山英美は、自然にコミカルさを出していて、この人の幅広さがよくわかる楽しいパックだった。
妖精の王・オーベロンの妻タイターニアの浜崎留衣は、怪演ともいうべき力技でこの人らしさ全開。圧倒的な存在感を見せつけた。
対するオーベロンの彰田新平は、そんな浜崎留衣の演技をみごとに受け止めた。
貴族組は、主役のふたりがノーブルさに欠け、ヘレナの原岡梨絵子を除けばみな単調な演技で、いまひとつ精彩を欠いていた。
職人組は、全体的なパワー不足のなか、ボトムの笹本順子ひとりが奮闘。職人それぞれの個性を際立たせて絡ませて、特に劇中劇ではもっと猥雑なパワーを噴出させてほしかった。そのためには演出上の工夫も要るだろう。
貴族組、職人組がちゃんとパワーアップしていて拮抗していれば、おもしろさはさらに際立ったはずだ。
照明が心地よくこの舞台を盛り上げ、節度を守りながら決めるところは決める音楽もよかった。
そんなふうに楽しめた公演ではあったが、斬新さには少しばかり欠けていて、やや古臭いという印象は残った。
この舞台は、ぽんプラザホール10周年記念 福岡・九州演劇祭の企画の公演で、27日から9月1日まで8ステージ。満席だった。