ヨーロッパ企画らしい肩透かしの連続という、人を喰った芝居だ。その肩透かしが何とも絶妙で、ゲラゲラ笑ってしまう。
街が水没しつつある近未来。水没しつつある海辺でサーフィンする人たち。
そこに、サーフィンUSB(USB付きのサーフボード)を売り込みに、2人の男がアキババレーからやってくる。
10分ごとにやってくる意外すぎるほどの展開が、何ともバカバカしくておもしろい。
入水自殺しにきた女性。レジェンド・サーファー。そしてなんと人魚も。それがそれぞれ豹変するし、いろいろあって絡む。
サーファーたちがサーフィンUSBを受け容れて、サーフィンデータのダウンロード数競争になると、当初の状況とまったく逆転してしまう。
意外すぎるほどの展開が軽々となされて、期待した劇的感興をことごとく裏切っていく。
そのあたりのすっとぼけたやりかたが、まさにヨーロッパ企画だ。
そして、ヤマ場が来ないうちになんとなく終わってしまう。これもまさにヨーロッパ企画。
ストーリーは軽やかに一方的に展開していくだけ。何かあるかと期待して観ているのに、落語の落ちのように軽やかにサッと終わる。
テンポよく畳みかけてくる短い芝居なのに、どうでもいいハンバーグの食べ方の話に時間を費やすといういびつさも。
そのあたりも伏線として、みごとに計算されつくしている。
この舞台の、周到に準備されていねいに表現されたリアリティはどうだ。
海の部分を見えなくするために、舞台下方を高さ1メートルほど隠し、左右と上方にも幕があって、ほんとに額縁の中に収まったと見える舞台。
それに明かりが入ると、近未来の雑然とした水際が非常にくっきりと浮かび上がる。そこにいる人たちもくっきり。
そこでは、リアルと仮想が渾然一体となり、まさに超精細の電子水槽でも覗き込んでいるような不思議な気分になる。
アフタートーク聴いててわかるが、ここの俳優は素のしゃべりと舞台でのしゃべりがほとんど変わらない。
もちろん舞台では計算されつくした演技だろうけれど、素の身体性をそのまま舞台に乗せていると感じさせ、しかも役はちゃんと成り立っている。
全部がレトリックという舞台だが、俳優の演技も例外ではない。
この舞台は福岡ではきょうとあすで2ステージ。会場を中劇場に移したためか、若干空席があった。