福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ  前ページへ 次ページへ


《2010.10月−12》

平板でたいくつな舞台
【踊りに行かないで (非売れ線系ビーナス)】

作・演出:田坂哲郎
24日(日) 14:05〜15:35 ぽんプラザホール 2000円


 みごとに何もない、甘ったれた、どうしようもなくつまらない舞台だ。

 童貞のカイダ君とダンス好きのオードリーは、コンパで知り合い同棲する。
 しかし、オードリーはダンス教室に通い詰める。どうやらそこのインストラクターのコトブキと関係があるらしい。

 ダラダラとどうでもいいエピソードが羅列されるだけで、たいくつ極まりない。
 亀頭→亀 という発想からして安直。亀頭が別人格を持って本人と絡み、包茎手術してしゃべりだすものの、それ以上のツッコミがなくて、陳腐でインパクトは弱い。
 話は平板で、本気で絡まないし、展開もちんけ。よけいな説明ばかりで、ドラマを形成するようなエピソードはない。

 結局、恋人入替の四角関係の話なんだけど、別に何ということもないし、だから何なのという印象しかない。
 何も表現されていないとさえ見えるのは、関心の対象があまりに幼稚で、とても何かを表現しているというレベルに達していないからだ。
 脚本がみごとに何もしないから、そんな結果もやむを得ない。ドラマドクターがなぜ脚本の欠点をきちんと指摘して書き直させなかったのか、理解に苦しむ。

 そんな脚本を、演出はムリに膨らまそうとしているが、手の施しようがない。
 ここでのドラマドクターの仕事は、演出のよけいな突出物を押さえ込むことだったようで、できあがった舞台の形の整合性は、この劇団らしくないまとまり方だった。
 それでもそこが限界で、演出が換骨奪胎して再構成するならまだしも、そういう発想も力もないから、いまのレベルでは脚本の欠点のカバーのしようがない。

 コンテンポラリーダンスを扱いながら、ダンスシーンの魅力のなさはどうだ。振付がワンパターンで、まったくおもしろくない。
 作者はリーフレットの「ごあいさつ」で自身を「コンテンポラリーダンスの野次馬」だと言っているが、コンテンポラリーダンスを取り上げるならもっとちゃんと勉強するべきだ。
 ドラマドクターがついていながら振付のつまらなさは、ほんとに何を見ていたんだ、と毒づきたくもなってくる。

 この劇団、長期低落傾向に歯止めがかからない。謙虚に努力することを怠った、当然の結果だ。きちんと演劇と向かい合うべきだ。
 とてもとても、東京公演をするレベルじゃない。

 この舞台は、22日から25日まで6ステージ。空席が目立った。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ  前ページへ 次ページへ