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《2011.5月−3》

生き生き女優陣、見られただけでもいいか
【四つの部屋と、住人と。〜for summer season〜 (演劇関係いすと校舎)】

作・演出:守田慎之介
5日(木・祝) 14:05〜15:45 西鉄ホール 共通チケット10,500円


 この劇団の女優の演技を見ることが楽しみだったが、その演技は、外部出演の舞台の演技に比べると大きく精彩を欠いていた。
 ほんとに脚本と演出が、さりげなさ過ぎ・カッコつけ過ぎで、上滑り。女優の魅力をほとんど引っ張り出しきれていなかった。
 それにもかかわらずこの舞台は、女優の魅力で支えられていて、それで何とか眠らずにすんだ。

 ワンルーム4戸だけの2階建てアパート。住人は男1人、女3人。それぞれに、季節にちなんだ名前になっている。
 そんな住人たちの交流と、住人の知り合いの出入りを、春からクリスマスまでの季節の移ろいとともに、淡々と描く。

 はじめは快調だ。
 アパートの住人・出入りの友人などの個性と、それらの関係が生き生きと描かれていて、期待を持たせる。
 しかし、だんだんつらくなってくる。
 人と人との交流はあっても、あまりにさりげなさ過ぎて、状況を変えていくほどにはからまない。
 ただの情景描写を流しているだけなので、人物の個性ややりとりにだんだん慣れてくると、はじめは新鮮だったテンポのいい日常会話のセリフが、だんだんメリハリのない一本調子に聞こえてくる。

 脚本・演出は、一本調子を打開する策を打てない。
 人と人とがからんで展開するドラマはないし、舞台の外で展開していて舞台に反映するドラマもない。静謐だが象徴的に表象されるというようなエピソードもない。
 ほんとに何の仕掛けもできない。その結果、ドラマとしてねじ上げられて大きくうねっていくようなことはなく、たいくつな舞台になってしまった。

 それでもなんとか眠らずに舞台を観つづけられたのは、女優の魅力のおかげだ。
 姿かたちががいいし、声もいい。素直な演技で、人物造形もなかなか。実力の発揮のしようがない状況で、よくやっている。
 でももったいない。人間の本性が顕われるような役を観たいが、そんなレベルの脚本ではなかったのが残念だ。

 文句は言ったが、舞台の印象が全然ダメだというわけではない。
 はじめは新鮮な印象を受けたように、洗練されたすがすがしさがあり、やり方によっては、生きのいい舞台が作れる伸び代の大きい劇団だとみた。

 多彩な女優陣で、顔と名前が一致しない。リーフレットに配役表がほしい。
 この舞台は、福岡演劇フェスティバル公募枠公演で、きょう1ステージ。若干空席があった。

***福岡演劇フェスティバルの共通チケットについて***
 「パル・フレナック・カンパニー」がなくなっても同一値段というのは納得がいかないということを前回の感想で書いたが、この公演で、福岡演劇フェスティバルのプロデューサーが、共通チケットの観客ひとりひとりにあいさつをされていた。


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