アイディアは悪くないのに、肝心のところが伝わってこない。
瑣末なところで遊んで大事なところが抜けてしまうこの劇団の悪癖が、まだ克服されていない。
醜いからと紙袋をかぶった女とその弟の話を核に、高校の探検部の仲間たちのエピソードなどを通して、顔かたちの美醜と幸せの関係を描く。
舞台はホール中央にあり、200席超の観客席がそれを囲んで四方に作られている。
中央に2m四方で高さ1mの台。台は大小の箱を組み合わせてあって、外して動かしてイスなどとしても使われる。
その台のまわりや上で演じられる。出番でない俳優は、紙袋をかぶって舞台の外縁部に座る。
前半は、くすぐりが多い。けっこう笑ったけれどレベルが低い笑いで、半分以上は冷笑で応えるしかないというレベルだった。
短いエピソードを積み重ねながら進める形だが、つまらないくすぐりが肝心のエピソードの印象を弱めてしまった。
後半は、シリアスに展開して、この舞台が企図したものが少し見えてはくる。ただ、やや未整理に繰り出されるエピソードに混乱して、舞台の全体像がうまく立ち上がってこない。
散在するアイディアがまだまだ弱く、それがうまく繋がらないのがもどかしい。
文学大賞を10年連続で取ったり、総理大臣になったりといった、絵空事・夜迷い事の類を簡単に書いてしまう神経にも、かなりウンザリする。
わずかだがアイディアに溢れたエピソードもあるにはある。
紙袋をかぶった女と、イメージのなかの女を愛する男の恋。愛し合えたと思った女が紙袋を取る−このアイディアはいいし、見せた。もっと突っ込んで、引き伸ばしてもいい。
こういうものや切れのいい小ネタをがもっと多く散りばめ、それをうまく繋げていければよいのだが、だまだだ弱い。
ほんとにその、繋げていくということも、この舞台ではかなり問題だ。
作者の中ではエピソードマップがあって、多面的・重層的に構成されたイメージがあるのだろうけれど、なかなかそれが見えてこない。
キーワードや象徴的な物や共通の強い思いなど、それぞれのエピソードを繋いで全体を大きくクローズアップさせるような工夫があってもよかった。
この舞台は、福岡演劇フェスティバル公募枠公演で、きょう2ステージ。満席だった。