脚本も音楽も振付も十分に練り上げられている。
それを、思い切り費用をかけた大掛かりで手の込んだ舞台装置で、きらびやかなミュージカル作品にした。スペクタクルの醍醐味が楽しめる舞台だ。
名作「オズのオズの魔法使い」で、ドロシーに退治される悪い西の魔女・エルファバ。
そのエルファバと、善い東の魔女となるグリンダとの、出会いから親友となりながらもよれ動く関係を描いていく。
第一幕は、学園でのエルファバとグリンダの出会いが中心で、第二幕は、オズの国のエメラルド・シティでの王との対決が中心。
ラスト、エルファバはドロシーに退治されてしまうのだが、セリフにあった「善人と悪人とは紙一重」で「見かたによって変わる」のであって、ここではドロシー(舞台には影絵で一瞬登場するだけだが)が、バカで粗暴な少女として描かれている。
劇場は、ウィキッド仕様になっている。
舞台は天井まで、デコレーションされた大きな額縁で囲まれている。1階客席上には巨大なドラゴンがいて、動いて光って吼える。どれだけでもけっこう迫力がある。
微妙なところまでを書き切った脚本、魅力的なナンバー揃いの音楽、一分の隙もないような精緻な振付。みごとな完成度で、さすが一流のミュージカル。人を酔わせる力がある。
しかし残念なことに、そこまではすべて輸入品。俳優だけが国産という舞台だが、その俳優の技量の個人差が大きい。
エルファバの江畑晶慧は歌がうまく、第二幕ではみごとな存在感をみせる。グリンダの山本貴永には、天然らしい愛くるしさがほしい。フィエロの北澤裕輔には、凛々しさがほしい。オズの魔法使いの松下武史は、威厳に欠ける。
これらは、俳優のキャラクターの問題というよりも、演技力の問題ではないかという気がする。
そういうことはあっても、この舞台はおもしろい。「アイーダ」や「コンタクト」のようには、観る側のセンスも要求されない。
福岡では4月から4ヶ月公演。やや暗い話でオズの話もそれほどポピュラーではないからか、空席が目立った。客足が伸びることを期待したい。