ド派手な照明・音響だけの舞台だ。気楽には観られるが、かなりたいくつだ。
ご都合主義の荒唐無稽さがこれまでよりは若干弱まってはいたが、それでもまだ、脚本も演出も演技も大雑把で、全体の印象は大味だ。ピリッとしたところがなく、発想が幼稚すぎて、わたしの好みではない。
子どものころから入院してばかりの姉・あかりを気遣う妹・まどか。
姉・あかりは深夜に病院を抜け出して城跡の森に行き、戦国時代の女武者・由良と友だちになる。
由良は、鬼にさらわれ鬼となった女武者で、人間であり鬼でもある。
姉・あかりは、家族の負担を和らげるために、由良に自分を殺してほしいと頼み、由良はあかりを殺す。話は荒唐無稽なこれだけの話で、あとは情景描写ばかりで、ドラマとしては非常に弱い。
見せ所の由良の二重性は詰めが甘く、鬼と人とがきちんと際立たない。
主君への忠誠のためには自分の生まれた村も焼き払うなど残虐の限りを尽くす女武者。その天罰で鬼たちから攻められ城は落ち、由良は鬼となり永遠の命を得る。鬼と人間の位置づけが適当で、場面でコロコロ変わる。
家族のために死ぬ姉・あかりは能天気。
煩悶もなく由良に自分を殺すことを依頼し、さっさと死んでいく。妹・まどかは、姉の死を望んだことがあることを後悔するが、由良に慰められてそんなことはケロッと忘れる。殺しといて慰めるなよ由良、と突っ込みを入れたくなる。
ほんとに、描かれた死が非常に軽い。
そんな支離滅裂な話の幾多の矛盾に目をつぶって、やたらド派手な照明・音響でやたらデコレートする。
派手な衣装で派手な殺陣だが、その殺陣は、ほとんど内容のない大雑把な振り付けのショー。演ってるほうはおもしろいかもしれないが、劇的な感興は薄い。
俳優が非力なのは、この舞台のなかでも客演の最所美咲ひとりだけが目だっていたことからもわかる。
俳優が非力だからこんな脚本になるのか、こんな脚本だから俳優が非力になるのか。おそらく両方だろう。
この劇団は、東京に本拠を移すという。
この舞台は東京移転前の福岡での最終公演で、14日から15日まで3ステージ。若干空席があった。