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《2011.5月−8》

これぞ永山、という舞台
【 prayer/s (RAWWOEKS)】

作・演出:永山智行
16日(月) 18:35〜19:50 Konya gallery 1,000円


 極限状況にあける生々しい生を、どっと骨太に投げ出してみせた存在感たっぷりの舞台だった。性的なもの丸出しで、永山智行、久々に本領発揮だ。
 短期間で作り上げた勢いと熱気も伝わってきて、おもしろかった。

 一室に横たわる11人と、外から来る1人。11人は、激しく独白したり、ペアで激しくぶつけ合ったりして、部屋の外に去っていく。

 閉鎖された窓のない部屋に、細いろうそくが6本だけの照明で、俳優たちの顔は識別できないほどに暗い。
 思いのたけを吐き出した俳優たちは、ローソクを持って退場していく。人もローソクもだんだん減って、2人と1本だけになり、最後はその1本もそれも吹き消されて、真っ暗闇に還る。

 それだけの単純な舞台なのに、緊張感は途切れない。あまりよく見えない舞台だが目が離せす、半分暗闇を凝視する。
 暗い舞台の上で、強い思いが渦巻く。言葉にならない獣のような呻吟、咆哮。怒り、哀しみ、恨、怨念、後悔などなど、断ち切りがたい負の情念が渦巻く。
 特に男女ペアの絡みは、激しく求め合ったり激しくなぶったりと、のた打ち回りぶつかり合う肉体から表出される思いは強烈だ。

 ここには、俳優が思い切り自己をぶつけられる環境が作られていて、俳優が思い切り自己をぶつけることが求められている。
 象徴的で抽象的なシュールで演技、内から激しく噴出するような演技で、思い切り自己表出している。俳優たちは手加減せずに演じていて、それが力になっている。
 それにしてもどれだけ稽古したのだろう、俳優の演技は安定している。磨き上げてエネルギーがなくなることもあるから、この舞台の勢いを見られてよかった。

 このところ取り澄ましたような舞台が多くて、やや物足りなさを感じていた永山作品だが、ここではいかにも永山という舞台でその力を見せつけた。
 あえて見えなくすることでインパクトを与えるろうそくだけでの上演とか、一般にこのごろ影を潜めているようなことを当たり前にやっているのもよかった。
 俳優の退場のときに別室の灯りが大きくもれてくるのは、せっかくの効果を減殺していて残念ではあったが。

 この舞台は、きょうとあすで3ステージ。20席ほどの会場は、ほぼ満席だった。


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