山本安英の会の「夕鶴」は、1972年に茂山千之丞の与ひょうで観ている。
今回の上映は1969年上演の宇野重吉の与ひょう。この宇野重吉の与ひょうが絶品だった。
演じ続けられて進化してきた「夕鶴」の、たぶん最高の舞台なのではないか。
今回の参加者はいつもより多く、8人。
少し早めに上映開始したので、45分ほど皆で話す時間があった。
20歳前後の若い女性の演劇専門学校生2人が参加されたが、宇野重吉はむろん、息子の寺尾聡もご存じない。世代の違いを意識してしまった。
古い映像なので白黒で画面も粗いが、舞台の息遣いは伝わってくる。
全体のリズムがものすごくいいと感じるのは、戯曲のもつリズムを俳優がみごとに体現しているからだ。変わっていく状況がキッチリと伝わってくる。
ほんとに、新劇とひとくくりにしてはいけない。新劇の秀作の持つ多様で豊かな表現は、見るべき多くのものを含んでいることがわかる映像だった。