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《2011.5月−13》

御詠歌の美しさに感動
【空海劇場 前夜祭「空」 (空海劇場プロジェクト実行委員会)】

企画・製作:エムアンドエム
24日(火) 18:30〜20:20 東長寺 本殿前特設舞台 3,500円


 声明が聴きたくて、東長寺の五重塔落成記念「空海劇場2011」前夜祭「空」に行った。しかし、声明はそれほどよくなくて、御詠歌のほうがよかった。

 本堂前に作られた舞台での上演で、明るい時間から始まりとっぷりと暮れるまで、街の喧騒や空を行くヘリコプターの音までも含めて、屋外での公演の楽しさがあった。
 ライトアップされた五重塔が美しかった。

 「空海劇場2011」は、プレ公演「流」(音楽イベント)、前夜祭「空」。本公演「海」(能「空海」)と続く。能「空海」はすでに観ているので、今回は観なかった。

○御詠歌(高野山金剛流合唱団)
 約20人の僧により、「金剛」「観音大慈和讃」「三宝和讃」「法悦歓喜和讃」が披露された。譜面付きの詞章が配られ、解説がされた。
 御詠歌とは、仏を讃える歌(讃仏歌)で、一般大衆から自然発生してきた日本独自の仏教音楽であり、1000年の歴史を持つ。御詠歌には、詠歌(五七五七七)と和讃(七五調)がある。
 真言宗の御詠歌は、金剛流にそのやり方が統一されている。
 「金剛」は、弘法大師第一番の御詠歌。合唱。約20人全員が手に持った鈴の音と声で、ゆったりとしっとりと聞かせる。譜面を見ると、節回しがかなり複雑だというのがわかる。約6分。
 「観音大慈和讃」は、ソロで。バイオリンの前奏のあとに謡われる和讃は、メリハリのないゆったりとした歌謡曲といった趣で、聴いていて心地いい。約6分。
 「三宝和讃」は、仏法僧の三宝を讃える和讃。10人強の僧による二部合唱で、みごとにハモる。女性3人による舞踊が付き、華やかな雰囲気になる。約7分。
 「法悦歓喜和讃」は、バイオリンも加わった約20人全員による四部合唱。ハミングのリフレインが付くことで、単調な節に面白味を持たせている。約5分。

○狂言「末広」(能楽師大蔵流狂言方)
 大蔵流山本家による狂言。主人に、末広(扇子)を買いに都に行かされた太郎冠者。和傘を末広だといって売りつけられる。
 シテの山本東次郎が急病で、シテをアド役だった山本則俊が演じ、アドを山本則重が演じた。もうひとりのアドは山本則孝。いかにも大蔵流という剛毅な演技がよくて見応えがあった。
 ラスト近くに踊りがあって囃子が入る。お能の囃子とは違って、座り方が違い、演奏もやや軽い。30分強。

○声明(真言宗青教連 法親会)
 中央のきらびやかな台の前に藤田紫雲師が座り、約20人の僧が、後ろに立ったり舞台を廻ったりしながら、声明を歌う。儀礼に用いられる声明を再現した形式の舞台だ。
 「庭讃」「散華」「対揚」「唱礼」「光明真言行道」が歌われたが、それぞれの曲はわたしには判然としなかった。
 真言声明からだろうか、仏典につけた節は素朴で剛毅。そこは出ていたが、どこかうまく響かず、少し粗削りな感じがした。40分弱。

 この舞台は、きょう1ステージ。満席だった。


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