エチュードを組み合わせたという構成の舞台だが、大きな構成はしっかりしており、不条理な経験がしっかりと反映されていて切実な、見応えのある舞台だった。
東北大震災で友だちのキリカをなくした高校生・ヒロコ。
文化祭でプロレスをやりたい同級の男3人組と、「復活」の鍵を探す旅をする。
ロールプレイングゲームの形を借りて、自らがキャラクターとなって、試練を乗り越えて目的の達成を目指す。
耐え難い悲しみや嘆きは、そのまま吐き出してもそれなりの存在感を持つかもしれない。しかしそれではあまりに暗く重苦しい独りよがりのものになる。抽象的な言葉に直せば空疎に感じられるかもしれない。
そこをどう避けて観て楽しい舞台にするか、ということで、自由な発想が籠められるゲームの世界を選んだ。そのためにスッキリとわかりやすくなり、ちゃんと現実の重さは反映されている。
楽しませる要素はタップリだ。
時空を飛ぶ〜はじめは、リアルなところとゲームとの切り替えがみごとだが、だんだんとそれが融合していく。詰め込みきれないほどの内容を、ものすごく速いテンポで表現していく。
キャラとして福島原発が出てくる。そしてそのあとに現れるキャラ「エコノミー」。そうこれは、いまさえよければいいという快楽全体主義ともいうべきわれらの性向の象徴だ。原発事故の先にあるものまでを見据えている。
そういう鋭い批評性を持ちながら楽しくて、高い叙情性もあり、ズシリと腹に応える舞台だった。
語るべきテーマがあって、そのためにアイディアを出しあえば、迫力のある舞台ができる。
耐え難いきびしい経験に打ちのめされることなく、そこを大きく客観的に見つめて表現している。圧倒的な存在感は、実際に経験したからこそ表現できるということだろう。
事実の重大さが、演技の巧拙を越えて伝わってくる舞台だった。
この舞台はきょう2ステージだが、昼の公演は高校生限定で、一般公開の夜公演は超満員だった。