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《2012.3月−6》

コンテンポラリーダンスの醍醐味たっぷり
【季節のない街(Co.山田うん)】

振付・演出:山田うん
24日(土) 16:05〜17:25 北九州芸術劇場 2,100円


 静かなダンスと激しいダンスがうまく案配されていて、そのメリハリが心地いい舞台だ。
 身体能力の高いダンサーたちが余裕をもってかっこよくやるのではなくてギリギリまで動く切実さ、その息遣いまでもがピリピリと伝わってくる。激しいときのダンスの迫力には圧倒される。

 山本周五郎の小説「季節のない街」に想を得ているが、そこにいるが小説には登場しない人たちを描いたという。舞台を駆け抜ける六ちゃんらしき人物は出てくるが、それは彼が街への案内人だからだろう。

 舞台上での開演前の柔軟体操で、12人のダンサーの身体能力の高さがわかる。
 装置は、舞台上手に服や家庭用品を吊るした二段構えの高い台だけで、それが進行にしたがって移動する。
 全体は大きく3つに分かれる。壮大なシンフォニーに合わせたオープニング15分のあと、ピアノに合わせてのダンスが40分弱あって、ラスト15分はふたたびシンフォニーに戻る。

 シンフォニーに合わせたダンスは目いっぱい発散するようなダンスで、12人のダンサーがみごとにシンクロした変幻自在のフォーメーションで見せる。畳み掛けるような速いテンポの群舞は見応えたっぷりだ。
 ピアノに合わせたダンスは、ペアのダンスを組み合わせるなど、ダンサーそれぞれをじっくりと見せる。それでもそれぞれのダンサーたちは互いに支え合っていて12人全員の舞台であることに変わりはないが、それぞれのダンサーの個性が楽しめる。

 圧倒的なスピード感と柔軟な振付がすばらしい。  形を象徴的に見せるよりも、連続した形の変転を切れ味のいい変わり身でスピーディに駆け抜けることで見せる。時間が見えるような印象さえある。
 その振付は何でもありのいかにもコンテンポラリーダンス。寝そべったり転がったりの上下運動を多用していて、ダイナミックに変転するその形と動きがときにユーモラスで楽しい。ギリギリまで引っ張り出されたプロのダンサーの力を見せつける。堪能した。

 終演後に、山田うんと数学者の森田真生のアフタートークが30分以上あり、ダンスを作り上げる話が聴けて、これも楽しかった。
 この舞台はきょうとあすで2ステージ。満席だった。


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