5日間で作り上げた舞台の完成度にビックリする。キャスト・スタッフの努力は無論だが、脚本にも短期間に作り上げるためのうまい工夫があった。
三隈川沿いの道などを通る3、4のグループが描かれる。
姉妹とその仲良しの大学生。中学3年の女の子の仲良し2人。中学1年の仲良し2人。年配の女性と小学生の男の子。そして女性カメラマン。
それらの人の生活が、川面に映って浮かび上がってくる。
公募で参加した市民が、指導する演劇人とともに、5日間でオリジナルの舞台作品を作り上げて上演する。チャレンジ企画と銘打っていてその言葉どおり、ほとんど無謀とも思えるようなハードルの高い企画だ。
5日間で作り上げたと聞いてから観たから、出演者にセリフが入っているだろうかなどとよけいな心配をしてしまったが、杞憂だった。リーディング公演を作るような短い期間で作りながら、ワークショップなどで作るような作品とは違う本格的なものだった。
高いハードルを越えるにあたっては参加者それぞれにドラマがあっただろうなと、そんなところにまで思いを馳せ、どこかいとおしくさえなるような、そんな舞台だった。
舞台は、ホールの中央部を川が流れていて、その両岸に細い道がある。客席はその道の外側に合わせて60席ほど。
三隈川沿いをそれぞれのグループが、歩きながらだったり、立ち止まってだったり、ベンチなどに座ってだったりしながら、登場しては退場していく。
季節の流れとともにそれぞれのグループの状況は変化していく。大きな葛藤や劇的な展開はないが、日常生活の中にある思いはうまく紡ぎだされている。
各グループと接触する役として女性カメラマンはいるが、各グループは互いに絡むことはなくて、全体が結びついて1つのドラマになることはない。そのことに若干不満を感じないわけでもないが、そのような構造こそが非常に短期間で舞台を作りあげた秘訣なのだ。
作・演出の福田修志はアフタートークで、上演までこぎつけるのは殺人的だった、メンバーに恵まれた、と語った。
10代が多い出演者たちは、力まずに素直に演じていて、その自然さが好ましかった。よくぞここまで、とその努力を心から称賛する。