「赤い靴」をネタにした2人の劇作家の作品の競演は、それぞれの劇作家の特徴がよく表れているのはいいが、その舞台の質にはかなり差があった。
福岡を拠点に活動する2人の劇作家が、アンデルセンの「赤い靴」からそれぞれの切り口で執筆した上演時間30分ほどの短編戯曲をいっしょに上演しようという試みだ。
「とかげの」(作:宮園瑠衣子 演出:土橋淳志)
「赤い靴」の足を切る話を尻尾を切る話に置き換えた宮園瑠衣子の戯曲を、大阪の劇団A級Missing Linkの土橋淳志が様式的に演出していて、切れのいいわかりやすい舞台に仕上げた。
元カノと不倫してその夫の幻影に脅える男(中村卓二)に尻尾が生えてきた。その尻尾を切ってもらおうと頼んだ男(山口浩二)もまた不倫していた。
そういう双似型の2人の男を象徴するように、大き目のアイスクリームカップを直径3メートルほどの円形に並べた舞台は左右対称になっている。その円の周りを廻りながら会話し、「不倫いいじゃん」とか「バカになれ(受け流せ、開き直れ)」と言われて尻尾の男に迷いが生じてフラフラするあたりが、2人の俳優の的確な演技もあってうまく表現されていた。2人の男の双似型がクッキリしてくる。
観終わればスッキリして物足りなく感じるくらいだが、曖昧さを排するというところを徹底していて、この様式的な演出の意図は満たされていた。
「赤い糸の女」(作:上野敦子 演出:百瀬友秀)
かなりあやふやな戯曲の、そのあやふやさを収束させずに発散させるような演出で、かなりイライラが募る舞台だった。
2人の女―上等で派手なドレスの女(立石義江)が母で、質素で地味なワンピースの女(山下キスコ)が娘。その2人の関係のいくつかを象徴的に捉えたシーンを繋いだという構成の舞台だ。
戯曲の、母と娘の関係の変遷に目をつけたところはおもしろいが、観客がうまく解釈してくれるだろうという甘えからくるあいまいさが放置され、そこに無頓着で手前勝手な思わせぶりが加わっている。演出は戯曲のあいまいさを解消するどころか、自身の思わせぶりをかぶせてさらにあいまいにし、俳優の演技までが思わせぶりになっていて、イメージは迷走し拡散する。トトロ、ムーミンなどの安易なイメージ借りがイメージの拡散にさらに拍車をかけ、舞台の質と品格を下げていた。もっと単純に素直にやったがいい。
この舞台は4日から7日まで6ステージ。ほぼ満席だった。