エンターテイメントなら状況設定がいい加減でも適当な展開でも許されると甘ったれている上に、つまらんことでもゴチャゴチャやれば観る人は喜ぶと勘違いしていて、やたら騒々しいだけで実際はスローテンポの平板な舞台で、たいくつだった。
元覆面レスラーの結婚式が行われるホテルのホール事務室。式のラストのサプライズをひとりで企画していた司会者が、式の直前に倒れて救急車で運ばれてしまった。4人しかいないスタッフで司会までカバーして、結婚式を無事に終らせることができるのか。
この舞台を観る気になったのは、広瀬健太郎がチラシに「永遠なれ、支配人」という題で、ホテルに勤めていたころに指導を受けた支配人をリスペクトするような作品だと書いていたからだ。
実体験の劇化ならばこれまでの作品と違って、少しはリアルに作っているのではないかと思って、久しぶりにこの劇団の舞台を観ることにしたが、あったのはこれまでと同じく適当に作った雑駁さだけで、舞台の質はまったく向上していなかった。どころか、初期のころに比べて明らかにダウンしている。
状況設定とストーリー展開が実に手前勝手でついていけない。
肉アレルギーの司会者のための特注弁当を間違って渡して司会者が倒れた、という設定も、肉食べなければいいだけの話なのに特注弁当作るか? 作ったとしたら普通大きく表示するだろ、何でそれしないんだよ! アレルギーでぶっ倒れて救急車か? などと???が渦巻くのに、舞台は弁当を間違えた責任問題で延々と引っぱる。
ラストで、司会者が倒れたのはトイレでウイスキーを一気飲みしたからで、肉アレルギーというのは司会者の名前「ニク・ア・レルギー」を勘違いして受け取ってしまった、ということが明かされるが、こんな下らない話を納得して喜ぶ感覚は持ち合わせていない。
そのような観ていて違和感や疑問を伴うようないい加減さは枚挙に暇がなく、終幕まで延々と続くのだ。
ストーリーは見えているのに、よけいなことばかりを大げさな演技でやるから、せっかく考えたドタバタが埋もれてしまって際立たない。
演出は、にぎやかならば観客が喜ぶと勘違いしている。やたらにぎやかなのは常時ガス抜きされているようなもので、スローテンポで平板だと感じるのは、やたら膨らませたにぎやかしのためだ。俳優は、大げさにやったり力めば観客の届くと考えていて、しかも本筋と関係のないところで大げさに力む。二重に勘違いしている。
それにしても、これとほとんど同じような舞台を観たような気がするが、デジャブかな。
この舞台は11日から13日まで4ステージ。ほぼ満席だった。