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《2014.7月−2》

わかりやすい、ノンバーバルパフォーマンス
【ギア-GEAR- (ART COMPLEX)】

演出:オン・キャクヨウ
5日(土)17:05〜18:25 ART COMPLEX 1928(京都) 3,500円


 ノンバーバルパフォーマンスの日本初のロングラン公演「ギア-GEAR-」をやっと観ることができた。見やすい小さな劇場でのわかりやすいパフォーマンスを楽しんだ。

 荒廃した近未来、人間型ロボット「ロボロイド」が働き続ける元おもちゃ工場に、かつてこの工場の製品だった人形「ドール」が現れる。 ロボロイドとドールは、好奇心と遊びを獲得して少しずつ人間に近づいていく。

 舞台全体に工場内部がかなりリアルに再現されている。大きなダクトが壁や天井から突き出して這い回り、ギアや計器類やスイッチがいたるところにある。2階の高さのところに通路があって立体感もタップリだ。
 どうやら人間は死に絶えてしまったようで、4体のロボロイドたちは人間のいない工場で毎日、決められた作業を繰り返し続けている。
 4体のロボロイドを演じるのは、マイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングを専門とする4人の男性パフォーマー。白いドレスを着た清楚なドールはもちろん女性だ。その5人のパフォーマーで展開していく。

 まず、マイム的なアクションとダンス的なアクションを組み合わせて、5人がいろんなフォーメーションを取っりながらユーモラスに、状況をわからせ話を進めていく。マジックやジャグリングを担当するパフォーマーもキチンとしたパフォーマンスで、努力のあとがうかがえる。
 そのあとがいちばんの見せ場である、ドールにアピールするための、マイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングのパフォーマンス合戦。各パフォーマーはそれぞれに数分間の演技時間を与えられて、ここぞとばかりに持ちネタを披露する。それぞれにおもしろいが、特に、客席まで来て目の前で見せてくれるマジックが楽しかった。
 ラスト近く、工場の巨大ファンが暴走して電力が停止してロボロイドは動けなくなるという大ピンチに。ラスト、人の心を持ったドールの祈りが通じてロボロイドは再生する。そこでは、舞台から客席まで大量の紙が舞い散る紙あらしだ。

 この舞台、100席弱の客席は満席で、外国人観光客の姿も目立った。ちなみに演出のオン・キャクヨウは個人名ではなくて「御客様」の音読み。演出部のメンバーの中にウォーリー木下の名前を見つけてうれしかった。
 ロングラン公演のため、マイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリング、ドールともそれぞれ4人のパフォーマーが交替で舞台に立つ。出演するパフォーマーによって舞台の感じもかなり変わるようだ。
 若干の不満もなくはない。見せ場が各パフォーマーの個人芸頼りで、それに合わせたような構成のためにガッチリとした統一感に乏しい。ラストの紙あらしは盛り上げ方としては陳腐すぎる。ちゃんとしたパフォーマンスで見せるような工夫が要るだろう。

 この舞台は、第1回トライアウトとして2010年 1月大阪で初演。2010年末から翌2011年にかけてハウステンボスでも公演している。さらに大阪と京都でトライアウト公演を重ねた。
 ロングラン公演は2012年4月からART COMPLEX 1928で開始。時に長めの休演をはさみながら作品をバージョンアップしていて、今回上演版はVer.3.70。2014年1月には500回公演を達成して来場者数は3万人を突破したという。海外からのの観光客の観客も増えている。
 京都の観光名所と認知されつつあり、ロングラン公演がさらに続くとともに、2作目、3作目が作られることを願う。


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